現在、生産拠点から届く商品の入出庫自動化や、トラックの荷積み荷下ろしの自動化に向けた検証を続けている。検証期間は2026年3月までを予定しており、ピッキング作業の前後にある工程も自動化したい考えだ。次世代無人フォークリフトの共同開発にも取り組んでいる。
「フォークリフトのオペレーターはテクニカルなノウハウを持っており、日々のさまざまな変化にも柔軟に対応している。それをAIにいかに正しく教えるかが課題になりそうだ。ただ、技術はどんどん進歩しているのでやれないことはないだろう」(安藤氏)
キリングループと三菱重工グループは、2021年3月から物流の自動化構想を議論してきた。2021年6月には兵庫県尼崎市にあるキリングループの拠点でピッキング作業の自動化に向けた調査を開始。三菱重工のメンバーも現場でデータ収集や作業内容の分析を行った。
2022年6月には自動ピッキングシステムの構想を具体化し、2022年11月から2023年6月にかけて三菱重工の横浜ハードテックハブで共同実証を行った。2023年11月にキリンビバレッジの海老名物流センターへの導入を決定して2024年9月に着工し、このほど稼働した。
こうした取り組みがスタートした背景には、物流の2024年問題だけでなく、2018年ごろから顕在化した“運べなくなるリスク”への危機感がある。全国的な豪雨によって鉄道とトラックで物流を分散させるモーダルシフトの取り組みが大きな影響を受けた他、「本麒麟」などヒット商品の登場で配送量が増加して輸送能力が追い付かないなどの出来事があった。運べなくなるリスクを経営課題と位置付けて2020年にSCM部が発足し、サプライチェーンネットワークの構築に取り組んできた。
今回の自動化ソリューション導入に当たっては、投資回収を意識したコスト削減目標などは大きく掲げなかったという。「今回の狙いは社会課題の解決だ。導入コストを削減できるところがあれば下げていくが、まずは効果をきちんと見ていきたい」(キリンホールディングス 常務執行役員の岩崎昭良氏)。
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