三菱ロジスネクストは安土工場や滋賀工場を報道陣に公開し、AGF(無人フォークリフト)やAGV(無人搬送車)などの開発現場を紹介した。
三菱ロジスネクストは2024年3月4日、安土工場(滋賀県近江八幡市)を報道陣に公開し、AGF(無人フォークリフト)やAGV(無人搬送車)などの開発現場を紹介した。
トラックドライバーの時間外労働時間に年間960時間の罰則付き上限規制が2024年4月から適用される。従来行われていた長時間労働が抑制されることから、輸送能力が不足してモノが運べなくなる可能性が懸念されている。物流業界に限らず人手不足は年々、深刻化している。カギになるのが、トラックへの荷物の積み込みや荷降ろしを行う荷待ち時間やトラックドライバーが自ら行う自主荷役の削減だ。そのためには、物流業務の一層の効率化が必要になる。
三菱ロジスネクストは、日本輸送機(ニチユ)や三菱重工業 フォークリフト事業部門、TCM、日産フォークリフトを源流に持つ、2017年に発足した会社だ。物流機器の自動化や自律化を推進することで、物流業界の課題解決を目指しており、AGFも開発している。安土工場ではAGFやAGVの車体、フォークリフトの動力装置やフォークを上下に昇降させるマスト部分の組み立てを行っている。
AGFは自動運転で荷役を行うため24時間稼働でき、運転者の操作ミスなどによる労働災害も大幅に減少する。単純な搬送作業をAGFが担い、難易度の高い作業に有人フォークリフトが行うといった分担も可能だ。
従来、AGFは有人のフォークリフトに比べて、旋回などに必要なスペースが大きく、安全面を考慮して走行速度も遅いため、倉庫内でのスペース効率や作業効率で有人フォークリフトに劣っていた。しかし、三菱ロジスネクストが2021年に発売した「プラッターオートHタイプ」は有人フォークリフトに匹敵する高い性能を持つ。
走行速度は最高で時速9km(負荷時/前進時)、リフト上昇速度は最高で毎秒390mm(負荷時)、90度旋回して荷物を出し入れするのに必要な直角積み付け通路幅は2.7mと、従来の同社のAGFよりいずれも向上しており、有人フォークリフトに匹敵する能力を持つ。特に直角積み付け通路幅が有人フォークリフトと同レベルになったことで、同じ倉庫レイアウトの下で稼働できるようになった。
プラッターオートHタイプはレーザーで地上高200mmの物体を検知する障害物センサーを車体4カ所に配置しており、車体全周囲の障害物を検出できる。周囲の状況をより把握できるようになったことで、フォークリフトが本来持つ走行能力を発揮できるようになった。
壁面などに付けた反射板に赤外線レーザーを照射して位置関係を認識するレーザー誘導方式を採用しており、磁気誘導方式のように床面に磁気棒などを埋設する工事も必要ない。運行システムは20台まで同時に制御でき、状況に応じて最も効率がいい車両を自動で選択し、無線で指示する。
車体の向きを変えずに前、左右三方向への荷役が可能なため、ラック間の通路幅が通常のフォークリフトの半分で済む「ラックフォークタイプ」のAGFも開発した。レーザー誘導方式と磁気誘導方式のどちらも使用できるハイブリッドタイプとなっており、レイアウト変更などにはレーザー誘導方式で対応し、より正確性が必要な動作や屋外での作業は磁気誘導方式で行うといった運用が可能だ。
作業効率を高めるためフォークを4本持ち、一度に2つのパレットの荷役ができるAGFも開発した。「幅が狭い飲料系のパレットなどを同時に2つ運ぶことができる。ユーザーの現場で実証テストを繰り返して開発した」(三菱ロジスネクスト)。
その他、低温環境下における作業者の負担を減らすため、ニチレイロジグループと共同開発した−25℃対応の冷凍倉庫向けレーザー誘導方式無人フォークリフトを2022年に発売した。通常、冷凍倉庫のような霧が発生する現場では、レーザーが届かなくなるためレーザー誘導方式のAGFの導入は難しかった。三菱ロジスネクストが開発した車両は、「霧に強い別のセンサーを併用」(三菱ロジスネクスト)することで、冷凍倉庫での運用を可能にした。
また、物流現場の自動化ソリューションを開発するラピュタロボティクスは、三菱ロジスネクストの車体に自動化ソフトを搭載し、有人と無人の切り替えが可能なAGFとして2023年から販売している。「24時間稼働するためにはハードウェアの強さが欠かせない。われわれのフォークリフトの堅牢性を評価して導入いただいた」(三菱ロジスネクスト)
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