Cruiseの功績について、ソフトウェアなどを担当するリチャードソン氏は「Cruiseは、モジュール式AIシステムをエンドツーエンドモデルに置き換える新技術に取り組んできた。シミュレーションや評価、AIモデル、大規模なプラットフォームなどもGMで活用できる。これらを生かして、個人所有の完全自動運転車の実現に向けて、まずは乗用車でレベル3の自動運転システムの展開を目指す。技術が整い次第、レベル4の自動運転システムにも移行する。ロボタクシー事業の難しさを排除し、GMとCruiseのエンジニアリングチームが個人所有の乗用車向けで協力することで成功できる。自動運転技術のメリットをユーザーにより早く届けられるようになるだろう」と述べた。
センサーなど一部のCruiseの開発成果は、乗用車のレベル3以上の自動運転システムにもそのまま活用できるという。個人所有の自動運転車は、ユーザーが手動運転を希望する場面もあるため運転の切り替えなどロボタクシーにない機能も求められるが、Cruiseの技術をGMの手元に置き、活用を主導することで投資を抑制できると見込んでいる。また、Cruise以外の企業とも協力して乗用車向けの自動運転システムを開発する可能性もあるとしている。
Cruiseは2023年10月、米国でロボタクシーによる人身事故を起こしている。これを受けて事業を一時停止し、レイオフやシステムの性能見直し、経営層の刷新などを進めた。2024年4月に全て人間が運転する手動運転でデータ収集などを再開し、一部地域ではドライバーが運転席に乗車し、必要に応じて運転に介入できる体制で走行し始めていた。また、安全性を重視する一環で地域の救急や消防、警察との連携に取り組んでいた。
2024年8月には、UberのプラットフォームにCruiseの自動運転車を導入する複数年のパートナーシップを結んだ。シボレー「ボルト」をベースにした自動運転車が、Uberのアプリで配車をリクエストする際のオプションに2025年から追加される予定だったが、立ち消えになりそうだ。
日本ではホンダが大きく影響を受ける。ホンダとCruise、GMは2023年10月、自動運転車によるタクシーサービスを2026年初めから東京都心部で提供すると発表していた。数十台からサービスを開始し、500台に増やす目標も掲げた。
発表時点では、3人ずつ対面で着席する6人乗りの「クルーズオリジン」を使う予定だった。ホンダが車体の上屋を、GMが電池を含めたプラットフォームを担当して開発した車両だ。自動運転技術はCruiseによるものだ。ステアリングやペダルなど運転席がないレベル4の自動運転車で商用運行するため、関係省庁と連携して緩和規定の活用や最終的な型式認証に向けて詳細を詰めようとしていた。
ホンダとGM、Cruiseは栃木県内でも公道実証実験を行うなど、日本でのロボタクシーサービスに向けてここ数年で協力してきた。
GMの電話会議では「Cruiseのロボタクシー事業に今後投資しないことを決めた」という表現にとどめていたが、ロボタクシー事業が正式に中止になれば、東京で2026年から提供する予定だった自動運転タクシーサービスはホンダとしても中止にせざるを得ない。しかし、ホンダは日本のユーザーに向けて新しい移動の価値を提供する研究開発を継続しており、より市場のニーズに合ったサービスを引き続き検討するとしている。
GMとホンダの間ではEV(電気自動車)や燃料電池で複数の共同開発プロジェクトが進んでいる。協力関係の発展について両社のトップで継続的に議論しており、良好な関係性は変わっていないとしている。
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