そこで、JR東日本とパナソニック エレクトリックワークス社は、AIカメラを用いてポンプの稼働状況をチェックできるか検討を始めた。ポンプの分電盤には故障の種類や、貯水槽の流量を示すランプがついている。分電盤のこれらの表示を映像で見られるようにすることが、利便性が高く故障からの復旧にかかる時間も短縮できると判断した。
AIカメラを採用したことで、LTEや5Gを使えるため光ケーブルのコストを削減できる他、PCとカメラをセットで置く必要がないため設置する機器をシンプルにすることができたという。AIカメラはネットワーク接続に対応しており、高度な映像分析を実現するプロセッサも内蔵している。分電盤のランプ点灯を検知すると、システムによって画像を添付して報告メールが送信される。
1カ所の排水ポンプにAIカメラは2台使用する。分電盤と貯水槽の水位をそれぞれ監視する。また、電力量を計測するためのエネルギーモニターとマルチ監視ユニットも設置した。エネルギーモニターの情報はJR東日本 八王子支社のオンプレミスサーバで管理する。詳細な状況確認ができることで、将来的な予防保全にもつなげる。また、クラウドではポンプの計測データとイベントデータを収集し、可視化や集計を行う。また、これから設置拠点を拡大した際にも一元管理で運用の効率化を図る。
また、ポンプの電力量の計測によって、稼働状況も把握している。エネルギーモニターは排水ポンプの分電盤に設置されている電路保護配線用遮断器に取り付け、回路ごとの電流や電力、積算電力量を監視する。これらの数値から故障の内容を遠隔地から予測することもでき、効率的なメンテナンスに貢献している。
パナソニックとJR東日本は2017年から駅の設備でかかわりがある。2017年には上野駅にデジタルサイネージ付き分電盤を設置。駅利用者に向けた案内を充実させるため、これまで人目につかない場所に置かれていた分電盤を活用した。
2021年からは、設備監視用のAIカメラの検討を始めた。安価な設備監視を実現するため、パナソニック製の汎用品で構成されたシステムを開発。2022年からは、武蔵野線の排水ポンプにAIカメラを導入し、このほどの実運用に向けて検討を重ねてきた。2023年には、JR東日本の電力部門でもAIカメラの活用が始まった。排水ポンプの遠隔監視は現在、JR東日本 八王子支社管内の3カ所に導入されている。他の支社も興味を持っており、排水ポンプ以外の用途にも対応できるか関心が集まっている。
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