以上述べたように、質点系は基本的に不安定であるため、制御によって安定化することを考える。図9に質点系の制御の様子を示す。
u(t)は制御入力、x(t)は制御出力である。この系の運動方程式は式14となる。
また、伝達関数は式15となる。
図9の質点系に、図10左図の位置の情報をフィードバックして制御することを考える。
このときの制御則(制御のための入力)は、
となる。r(t)は目標とする位置、x(t)は観測値、fpは位置ゲイン(ゲインとは元の信号を何倍に増幅するかという値のこと)である。このように、位置情報をフィードバックする制御法を「位置フィードバック」という。位置x(t)を目標値r(t)に戻そうとする操作なので“フィードバック”という言葉を使用している。また、“目標値を達成できるようにu(t)なる力を入力している”と言い換えることもできる。運動方程式により、目標値から観測値までの閉ループ系の伝達関数は、
となる(図10右図)。この制御の効果は、質点にばね要素を付加した場合と等価であることが分かる(詳しくは次回説明する)。
同じく図9の質点系に、図11左図の通り、位置フィードバックに加えて速度フィードバックを施すことを考える。
このときの制御則は、
となる。r(t),dr(t)/dtは目標とする位置および速度、x(t),dx(t)/dtは観測値、fpは位置ゲイン、fdは速度ゲインである。目標値から観測値までの閉ループ系の伝達関数は、
となる(図11右図)。この制御の効果は、質点にばね要素と減衰要素を付加したことと等価であることが分かる(これに関しても、次回詳しく説明する)。
以上の制御の効果を見るために、Modelicaを用いて検証してみる。
リスト2は、位置フィードバックに関する式である。
model Pfeedback parameter Real M = 1; parameter Real fp = 1; Real x; Real v; Real a; Real r; Real u; equation v = der(x); a = der(v); M*a = u; u = fp*(r - x); r = if (time > 2) then 1 else 0; end Pfeedback;
リスト3は、位置フィードバック+速度フィードバックに関する式である。
model PDfeedback parameter Real M = 1; parameter Real fp = 10; parameter Real fd = 0; parameter Real t0 = 2; parameter Real dt = 1e-5; Real x; Real v; Real a; Real r; Real u; equation v = der(x); a = der(v); M*a = u; u = fp*(r - x)+fd*(der(r)-v); r = if (time < t0) then 0 elseif(time>=t0 and time<t0+dt) then (1/dt)*(time-t0) elseif(time>=t0+dt) then 1 else 0; end PDfeedback;
図12に位置フィードバックの位置ゲイン、速度フィードバックの速度ゲインをパラメータとして解析した結果を示す。
位置フィードバックのみの場合には、位置ゲインを大きくすると応答周波数が高くなっていることが分かるが、いずれの場合も振動的になっている。一方、位置+速度フィードバックの場合は、速度ゲインを大きくすることにより、速やかに一定値に収束していることが分かる。
次回は、モーターで駆動される回転1関節機構について考える。 (次回へ続く)
大富浩一(https://1dcae.jp/profile/)
日本機械学会 設計研究会
本研究会では、“ものづくりをもっと良いものへ”を目指して、種々の活動を行っている。1Dモデリングはその活動の一つである。
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