SPCを用いた15ピンコネクターについて重量を比較すると、SPCの標準サイズである直径1.5mmの場合は1.5g、今回開発した直径0.35mmの場合は0.15gと10分の1になる。ワイヤレスイヤフォンなどさらなる軽量化が求められる製品では、この数字は大きな意味を持つことになる。
また、SPCを用いたコネクターはプリント基板間の接続にも用いられている。通常はフレキシブルプリント基板を用いたコネクターを用いるが、この場合、一方のプリント基板にプラグ、もう一方のプリント基板にレセプタクルのコネクターを実装し、それぞれにフレキシブルプリント基板を嵌合して組み立てる必要がある。SPCを用いたコネクターは、一方のプリント基板に実装した上で、もう一方のプリント基板上に掲載した電極パッドにSPCのピンを押し当てて接触させた状態で製品の筐体を組み立てて固定すればよい。部品点数が減らせるだけでなく、組み立て工程の削減にも貢献する。
ただし、従来のSPCはサイズが大きいだけでなく、ハウジング上で並べる際のピン間距離の標準が2.5mmであり、プリント基板の面積や回路設計の状況によっては実装できないことも多かった。新製品のSPCはピン間距離の標準が0.9mmまで縮小しているため、従来の課題を解決できる。
さらに、大幅な小型化により、プリント基板の空きスペースに合わせて、新製品のSPCによってピン数や配列をカスタマイズしたコネクターを実装するといった対応も可能になるという。石橋氏は「SPCを用いたコネクターはほとんどがカスタマイズ品であり、顧客の要望にさらに応えやすくなると考えている」と述べる。
新製品は、同一面積のハウジングのコネクターを多極化できることもメリットになる。従来品のSPC2本で構成していたコネクターと同じ面積に新製品はSPCを4本設置できるが、流せる電流量は2倍の4Aとなり、並列化によって抵抗値は75%削減できる。スマートグラスの場合、従来品のピンを4本用いるコネクターについて、同じ面積でピン数を18本に多極化して高速伝送に対応する一方で、ピン数を同じ4本に維持すれば大幅な小型化が可能になる。
新製品のSPCを用いた高速伝送用コネクターへの展開として、USB4規格と伝送速度40Gbpsに対応する防水コネクターも発表した。細径のSPCによる信号減衰の低減と金属ハウジングによるノイズ抑制で、USB4の厳格な規格を満たしつつ、ポッティングによってIPX7相当の高い防水性能を実現。ピン配列は最大24極に対応し、外形寸法は幅34×奥行き7.5mmとなっている。
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