注目デバイスの活用で組み込み開発の幅を広げることが狙いの本連載。第11回は、「破壊実験のロマン」に突き動かされた筆者が、パワーMOSFETを使ってシャー芯に灯をともす。
今回はパワーMOSFETの使い方を説明するためにシャープペンシルの芯(シャー芯)に灯をともします。読者の皆さんの中には、「それの何処が面白いのか」「何の役に立つのか」という疑問を持たれるかもしれません。その疑問に理路整然と説明はできませんが、筆者を突き動かしたものは「破壊実験のロマン」です。
また、直流電源に直接シャー芯をつないで灯をともす場合との差異を尋ねる方もいるでしょう。今回紹介する作例では、マニュアルで供給電力を調整するノブがあるという違いがあります。
実験用電源でもできそう? それはそうなのですが、制御はマイコンで行っていますので、マニュアルだけでなくマイコン仕掛けのシナリオを持ったドラマチックな灯のともし方にも道を開けます。
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今回の主役はパワーMOSFETです。この半導体デバイスはトランジスタの一種であるFET(電界効果トランジスタ)です。一般的なバイポーラトランジスタが電流の変化を入力として負荷に掛かる電流を制御するのに対し、FETは電圧の変化で負荷に掛かる電流を制御します。
パワーMOSFETはスイッチング制御のデバイスであり、電圧が「1」または「0」の変化で制御します。ここで言う「0」と「1」というのはいわゆるシンボルで、「0」が0V、「1」が5Vというように適切な値を割り当てます。
今回用いるパワーMOSFETの「STP75NF75」はSTマイクロエレクトロニクスの製品で、世界で最も汎用的に用いられているデバイスの一つです。図1の左側は、このSTP75NF75のパッケージの外観を示しています。STP75NF75には複数のパッケージのバリエーションがありますが、今回はTO-220のタイプを用います。
これはパッケージの上に飛び出た放熱板が絶縁されていないのでプリント基板に直接はんだ付けすることが可能です。この放熱板は2番ピンとパッケージ内部でつながっています。3本あるピンの内、左端が1番ピン、そして右端が3番ピンです。これらのピン番号は図1の右側の回路図と対応しており、1番ピンはゲート、2番ピンはドレイン、3番ピンはソースになります。ゲートに掛かる電圧が一定以上になると、ドレインからソースに電流が流れます。
表1はSTP75NF75の最大定格を示しています。かなりの大電流を扱えるデバイスであることが分かりますが、ただしこれは放熱板がしっかりしている場合に限ります。
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