企業は主に借入と株式によって負債を増やします。この2つの水準を比較してみましょう。
何となく想像はついていましたが、日本企業の借入が特殊な動きをしています。バブル期/ポストバブル期でどんどん増加し、1995年には5万ドルと極端に高い水準に達していますね。当時の他国の水準の約4倍です。家計の現金/預金と異なり、その後、目減りしています。
最近ではフランスやカナダを下回り、米国やドイツに近い水準です。当時、企業は過剰とも呼べる水準の借入をしていたと見て良いと思います。それが調整されて、現在では他国並みに落ち着いてきたという印象です。
なるほど。経済はつながっていますから、企業が極端に借入を増やした裏で、結果的に家計の金融資産、とりわけ現金/預金が増えたのですね。
一方で株式(持分/投資信託受益証券)を見ると、日本の企業は英国と同程度です。米国が極端に高い水準ですが、フランスも非常に多いですね。
はい、企業の負債の中で株式の占める割合が極端に高くなっています。企業が融資(借入)ではなく株式によって資金調達を行うようになってきたことと、株価の上昇による増大がミックスされている状況でしょう。
なるほど、とても興味深いです。このように時系列でみると、確かに日本はバブル期とポストバブル期で他国とは異なる状況にあったことがわかります。
ただ、その後の停滞期(1998年〜2010年頃まで)を経て、ストックの状態が他国並みになりつつあることが分かりました。ただし、家計の現金/預金が極端に大きな水準で、株式などがやや少ないといった特徴もあるようです。
今回はこれくらいにしておきましょう。次回は最終回です。このような金融面の変化があった裏で、固定産資産がどのよう変化したのかを見ていきます。
いよいよ次回が最終回ですか、どうぞよろしくお願いします!
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小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役
慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。
医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業等を展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。
古川拓(ふるかわ たく)
TOKYO町工場HUB 代表
京都大学法学部卒。バンカーとして日米で通算15年間勤めたのち、2004年に独立。技術と創造力で社会課題の解決を促すソーシャルデザイン/プロデュースの道を進む。自ら起業家として活動しつつ、ベンチャーファンドの取締役、財団理事等を歴任し、国内外で活動してきた。
2017年よりスタートアップのエコシステム構築を目指すTOKYO町工場HUBの事業を開始。さらに2022年より和文化(工芸、芸能、食文化)を海外向けにプロデュースするTokyo Heritage Partnersを立ち上げ、現在に至る。
2009年〜2020年:東京大学大学院新領域創成学科の非常勤講師(持続可能な社会のためのビジネスとファイナス)を務めた。現在、東京都足立区の経済活性化会議他、東京観光財団エキスパート(ものづくり分野担当)、各種審議委員会の委員を務める。
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