水準を合わせて時系列で比較すると、各国の特徴が良く分かりますね。米国が際立っているのも良く分かります!
はい。まず家計から見ていきましょう。この数値は、私たち家計の平均的な純金融資産とも言えますね。家計は金融資産を増やし続ける主体であるのが良く分かります。
日本は1990年代半ばには米国を超えていますが、その後の増加傾向はやや緩やかですね。近年ではカナダや英国と同じくらいのようです。主要国では、家計の純金融資産が多い方ですね。
ただし日本の場合は、バブル期/ポストバブル期に大きく増えています。つまり、その多くは現在の高齢者に偏在していて、現役世代はなかなか金融資産を増やせていないことも表しています。
60歳以上の高齢層が、7割以上の貯蓄シェアを占めているというデータ(家計調査)もありますね。
企業に目を移すと、日本は1990年代半ばに米国よりも純金融負債が多い状態でしたが、その後はむしろ水準が目減りしています。これは非常に重要な変化です。この期間日本企業は負債を増やすどころか、減らすという挙動をしているわけです。
本当だ! これはフロー面でも確認できましたね。日本企業の純金融負債は、最近の水準では米国、カナダ、英国より少なく、韓国、イタリア、フランスと同じくらいです。
一方で、急激に増えているのが政府の純金融負債です。ただし日本政府の純負債も2012年以降は横ばい傾向で、最近では米国より少なく、英国やイタリアと同じくらいです。企業の変質が著しかった1990年代後半から2000年代中頃で増大している様子も分かりますね。
たしか、カナダは家計の資金過不足がマイナスで推移していたはずですが、金融資産/負債差額は大きく増加しています。とても不思議ですね、なぜでしょうか?
とても重要なポイントです。ストック面の金融資産や負債は、時価評価されたものです。本来は、毎年の収支である資金過不足分だけ増えたり減ったりするはずですが、資産価値そのものの変動の影響も受けるわけです。
特に米国やカナダは、家計など企業以外の部門が株式を多く保有しています。株価の値上がり分だけ金融資産が増えているわけです。
なるほど。ということは、その分、企業の負債が増えていますが、その負債も株価の値上がり分だけ増えているということですね。
まさにその通りです。もちろんこれらの国々は企業の借り入れも増えていますが、株式の増え方も大きいようです。詳しくは次回解説していきましょう。
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小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役
慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。
医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業等を展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。
古川拓(ふるかわ たく)
TOKYO町工場HUB 代表
京都大学法学部卒。バンカーとして日米で通算15年間勤めたのち、2004年に独立。技術と創造力で社会課題の解決を促すソーシャルデザイン/プロデュースの道を進む。自ら起業家として活動しつつ、ベンチャーファンドの取締役、財団理事等を歴任し、国内外で活動してきた。
2017年よりスタートアップのエコシステム構築を目指すTOKYO町工場HUBの事業を開始。さらに2022年より和文化(工芸、芸能、食文化)を海外向けにプロデュースするTokyo Heritage Partnersを立ち上げ、現在に至る。
2009年〜2020年:東京大学大学院新領域創成学科の非常勤講師(持続可能な社会のためのビジネスとファイナス)を務めた。現在、東京都足立区の経済活性化会議他、東京観光財団エキスパート(ものづくり分野担当)、各種審議委員会の委員を務める。
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