上のグラフが日本全体の貸借対照表ですね!
はい、資産側をプラス、負債側をマイナスとしています。項目は、機械、建物などの生産資産、土地などの非生産資産、金融資産、負債です。
まさに会社の貸借対照表に出てくる項目そのものですね。
全ての資産から負債を差し引いたものが正味資産です。日本全体の正味資産を「国富」とも呼びます。日本全体の純資産ともいえるものですが、企業会計的な解釈とはやや異なります。
どういった部分が異なるのでしょうか?
まず、金融資産と負債は、国内部門同士で打ち消し合います。金融資産から負債を差し引いた金額を金融資産/負債差額と呼びます。日本全体としての金融資産/負債差額として残るのは、海外に対するものだけです。海外には固定資産を持っていないとみなしますので、これが対外純資産となるわけです。
なるほど。ちょっとイメージしにくいですが、そういうものなのですね。
はい。ここで重要なのが、資産も負債も時価評価されるという観点です。特に価格変動が大きいのが土地と株式ですね。
さらに、株式は金融資産でありながら、発行主体の企業の負債としてもカウントされます。企業の株主に対する負債ということです。これは、とても重要なポイントとなります
分かりました、それらを踏まえてグラフを眺めてみますね。
まず、生産資産や非生産資産に比べると、金融資産や負債のボリュームは大きいですね! 全体の水準としては、1990年まで増大が続き、1990年代後半にかけて傾きが緩やかになっています。その後は停滞が続き、2012年あたりからまた増大傾向に変化していますね。
そうですね。ただし、差し引きの正味資産はバブル崩壊の1990年からずっと横ばいです。金融資産/負債差額は少しずつ増えていますが、逆に非生産資産は少しずつ減少しています。
本当だ! それだけ非生産資産が減っているということでしょうか?
不動産バブルによる地価変動の影響が大きいでしょうね。非生産資産も時価評価されるため、単に土地を持っているだけで、土地の価値が上がった分だけ資産額が増え、不動産バブルの崩壊とともに下がっている状況です。おおむね2005年頃には地価が落ち着いたと見られます。
なるほど、単に土地の価格変化による見かけ上の影響が大きいということですね。
最も重要なのは、本来的な資産の蓄積ともいえる生産資産がほとんど増えていないことです。生産資産は私たちの生産活動に影響を与え、生産資産が増えると国全体としての生産性向上につながります。
生産資産の増え方にこそ注目すべきということですね。
はい、その通りです。それでは、部門別の貸借対照表についても見てみましょうか。
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