可視光を透過し赤外光を遮蔽するシートを開発、農業の高温リスク低減材料技術

東レは、ビニールハウスに被覆することで農作物の光合成に必要な可視光を透過し、ハウス内気温を上昇させる赤外光を遮蔽する農業用遮熱シートを開発した。

» 2024年07月09日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 東レは2024年7月8日、ビニールハウスに被覆することで農作物の光合成に必要な可視光を透過し、ハウス内気温を上昇させる赤外光を遮蔽する農業用遮熱シートを開発したと発表した。同シートは、機能剤を添加したポリエチレン製フラットヤーン(フィルムを短冊状に裁断した糸)とポリエチレン製モノフィラメントから成る。

 同シートの効果により、農作物の高温に対するリスクの軽減や、ハウス内作業従事者の熱中症リスクの回避/軽減などの労働環境改善が期待される。

ハウス内日中平均気温を最大約3℃低下

 同社では、2018年から石川県といしかわ農業総合支援機構、石川県内のトマト農家とともに「新たな遮熱資材を活用した高収益施設園芸モデル構築コンソーシアム」を組織し、農業用遮熱シートの開発と実証試験を進めてきた。

 同コンソーシアムでは、東レが中心となり、可視光の透過性が高く、赤外光を吸収/反射する遮蔽性に優れた機能剤を発見し、それを添加したフラットヤーンを開発した。加えて、製品重量や取り扱い性も考慮した織物を設計し、2023年に高採光性と高遮熱性を両立する農業用遮熱シートを実現した。

開発した農業用遮熱シート(左)とビニールハウスへの被覆状況(右)[クリックで拡大] 出所:東レ

 東レの調査によれば、トマト栽培において石川県内で多く使用されている既製品(可視光、赤外光を一律に遮蔽)と比べて今回の農業用遮熱シートは、夏季のハウス内日中平均気温(午前6〜午後6時)を最大約3℃、最高気温では最大約5℃低下し、トマトの裂果や着果不良といった高温障害の発生が軽減されることが分かっている。

 今後は、2025年春の本格販売に向け、検証点数を増加し、遮熱効果、トマトの収量性、資材の展張性や収納性などについて評価する。また、トマト以外の施設園芸作物や、明るさと遮熱性を両立するオーニングやシェードへの応用、展開も目指していく。

ハウス内の日中平均気温(午前6〜午後6時)の推移[クリックで拡大] 出所:東レ

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