勉強した方がトクなのは分かるけど、なんだか難しそうでつい敬遠してしまう「経済」の話。モノづくりに関わる人が知っておきたい経済の仕組みについて、小川さん、古川さんと一緒にやさしく、詳しく学んでいきましょう!
小川さん:学生時代アメフトで鍛えた、体育会系機械エンジニア&金属加工職人。経済統計に興味があり、趣味で統計データを共有する情報発信を続けている。ラーメン好き(現役時代よりも体重が増えていることは家族にないしょ)。
経済構造に詳しい古川さん: 元エリート銀行マンで、現在は起業しスタートアップの事業支援など、製造業を中心としたエコシステムの構築を進めている。大学の非常勤講師や、地域経済活性化のための委員なども務める。実は照れ屋。
(※)編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物、団体などとは一切関係ありません。
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古川さん、前回は金融勘定について解説していただきました。
貯蓄を元手に投資した結果、余ったり、足りなかったりした金額(純貸出/資金不足)が、金融資産/負債の変化した正味の数値と一致するという内容でしたね。
金融資産や負債の変動は、部門別に見ると、日本だけイレギュラーな期間があることも分かりました。企業が純借入から純貸出に転じるとともに、政府の純借入が増えていました。まるで部門間で連動しているかのような挙動でしたね。
経済が社会全体でつながっていることを、まさに示すものですね。
金融面から見ると、純貸出/純借入は資金過不足とも呼ばれます。今回はこの資金過不足を、「部門ごとに足し合わせると必ずゼロになる」ということを紹介します。
どういうことでしょう??
簡単に言えば、誰かが負債を増やすと、別の誰かの金融資産が増えるということです。これを確認する前に、まずは海外との資金の関係を整理しましょう。
輸出や輸入に関するお話ですね。
はい。ただし輸出や輸入といった貿易面だけでなく、移転や財産所得などのやりとりも発生します。これらの海外との関係をまとめたのが海外勘定です。統計グラフを見た方が分かりやすいと思いますので、早速見てみましょう。
プラス側とマイナス側に同じような項目が並びますね。
海外を1つの部門として見立てると、海外から日本への支払いもあれば、逆に日本から海外への支払もあることになります。海外勘定は、あくまでも海外目線で見ていることに注意してください。
輸出や輸入がメインで、これまでのフローで見てきたような調整が行われているようですね。
日本の場合、輸出と輸入が同じくらいの規模で推移していますね。最近はどちらもおおよそ100兆円程度です。リーマンショック時の収縮は見られますが、全体的に増加傾向が続いているようです。
そうですね、輸出と輸入がほぼ相殺されるのは、多くの国で共通する傾向です。輸出から輸入を差し引いた純輸出から、経常対外収支が次のように計算されます。
経常対外収支は、国内部門の貯蓄に相当するようなイメージですね。
そうですね、大まかにそのようなイメージで良いと思います。ただし、経常対外収支はプラスにもマイナスにもなり得る点に注意が必要です。さらに、経常対外収支に資本移転分を足し引きしたものが、海外部門の純貸出/純借入、つまり資金過不足となります。
あくまでも海外目線ですから、このグラフで資金過不足がマイナスになっているということは、海外の日本に対する負債の方が金融資産よりも増えているということですね。
そうです。言い換えれば日本の海外に対する資産が増えているとも言えます。
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