見落としがちな物流分析で生産性を高めコストを低減する現場改善を定量化する分析手法とは(8)(2/4 ページ)

» 2024年06月13日 08時00分 公開

2.積載効率の分析

 積載効率は、簡単にいえば、ある輸送手段が保有する積載容量に対して、実際に積載した荷物の量の比率を示す指標です。物流分析の中では特に重要な指標であり、コスト面や生産効率、経営効率、環境への影響などを大きく左右します。

 具体的には、トラックなどの輸送手段の最大積載量に対して、実際に積み込んだ荷物の重量や体積を比較します。積載効率を高めることで、同じ量の商品を運ぶために必要な輸送回数を減少させて物流コストを削減できます。また、CO2などの温室効果ガス排出量の削減にも寄与します。

 積載効率を向上させるには、効率的な物流システムを実現すること以外に方法はありません。積載効率の向上には、荷物の形状や大きさ、重さなどを考慮した最適な積載方法を見いだすことが重要です。結果として、物流業務の効率化と品質改善、コスト低減、環境負荷の低減などの面で効果を得ることができます。

2.1 積載効率の計算式

 積載効率の分析とは、トラックやコンテナなどの運搬機材の重量比積載効率や容積比積載効率の分析を行うことです。例えば、製品を運ぶトラックの許容積載量に対して、実際に積載する製品の割合のことをいいます。計算に用いる数値は、積み荷の重量や容積、面積などで算出します。

  • (1)積載効率(%)=積載重量(t)÷最大積載重量(t)×100
  • (2)見かけ積載効率(%)=積載梱包容積(m3)÷運搬機材容積(m3)×100
    梱包容積=製品容積+運搬容器、パレットなどの容積
  • (3)実質積載効率(%)=製品容積(m3)÷運搬機材容積(m3)×100
  • (4)製品包装効率(%)=製品容積(m3)÷梱包容積(m3)×100
  • (5)往復積載効率(%)={往路積載梱包容積(m3)+復路積載梱包容積(m3)}÷運搬機材容積(m3)×2 ×100

2.2 容積比積載効率の考え方

  • (1)運搬機材の許容重量よりも、容積比率が制約条件であるとの前提に立っています
  • (2)製品の裸輸送が、最も効率がよいとする考え方です
  • (3)異なる製品や品種を混載して積載効率の向上を図る場合には、次の混載率を指標とするのが適切であるとしています
    混載率(%)={積載梱包容積(m3)−主製品梱包容積(m3)}÷積載梱包容積(m3)×100

2.3 積載効率の改善

 積載効率の分析の最終的な目的は、物流コストの低減であることは明らかです。積載効率を改善することで、一度に運搬する製品の量が増加し、さまざまな効果を上げられます。

 まずは、前述の通り物流コストの削減が考えられます。また、多頻度少量の搬送が一般化し、さらに拡大傾向にある他、人口減少が甚だしい過疎地域などにおける積載率の低下や車両ドライバーの不足など、今後も長期的な課題と考えられる中では、配送の効率化を行うことが結果として生産性向上につながっていきます。ただし、ロットサイズの大きい物の社内物流は、積み直しなどの付帯する手扱い作業が増加する傾向にあるので注意が必要です。また、運送車両の台数を削減できれば、環境負荷の低減といった副次的な効果も期待できます。

 また、製造する製品の部材調達から設計、製造、梱包/発送を経て、最終的にエンドユーザーの手に渡るまでの流れを総合的に見直し、統合された全体の効率化を実現するための経営管理手法であるサプライチェーンマネジメント(SCM:Supply Chain Management)の導入過程において、流通コストの低減を狙いとした積載効率向上を図る必要があります。そのためには、自社便一辺倒の考え方のカラを破る流通革新が必要となり、下記の項目の検討が重要となってきます。

  • (1)他社との混載
  • (2)物流アウトソーシング
    外部の業者に物流業務の全てまたは一部を委託すること
  • (3)宅配便の活用
  • (4)梱包レス納入
  • (5)納入先顧客の近接地での組立
  • (6)3PL(サードパーティーロジスティクス)の活用
    3PLと呼ばれる事業者による物流全般の代行サービスのことで、メーカー(荷主企業)から物流専門業者に業務委託を行います。これまでの物流の在り方を見直し、最適化された物流システムで運営が行われます

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.