見落としがちな物流分析で生産性を高めコストを低減する現場改善を定量化する分析手法とは(8)(4/4 ページ)

» 2024年06月13日 08時00分 公開
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4.社内物流/生産物流の改善

 特に、生産工程間の品物の搬送を行うMHは、1つの工程で全ての変形加工を行うことができない限り、必然的に発生します。これは直接的な生産作業ではないので、できるだけ最少に抑制することで高い生産効率を得られますが、現実にはこれに要する経費はかなり大きいものがあります。だからこそ社内物流の改善は、大変重要な視点であるということがいえます。そこで、次のような改善策を講ずる必要があります。

  • (1)省略が可能な運搬はできるだけ排除する
  • (2)運搬距離を縮める
    運搬距離は、工場の機械配置(レイアウト)と、伴う物の流れに依存するので、作業工程をまとめたりマシニングセンターを活用したりなど、1箇所の工程で行うことで運搬距離を縮めることができます
  • (3)運搬回数を減らす
    品物を個別に取り扱うのでなく、形状や大きさ、重量などの標準化によって、まとめてパレットやコンテナによって最大運搬単位によるユニットロード方式により取り扱い運搬回数を削減します
  • (4)運搬速度を最適にする
    できるだけ停滞や逆行、交差がない連続した直線径路にして、生産工程での物の待ちが生じない工程の同期を図ったり、作業の機械化や自動化も併せて実施したりします
  • (5)在庫量や仕掛かり量を削減して、物の流れのスピードを上げる
    物の流れは、いつも円滑であるとは限りません。製品の加工作業や組み立て作業などと運搬スピードの均衡よっては、機械設備の前に品物の待ちが発生して工程間の停滞により流動在庫が発生してしまいます

 また、生産職場ヘの資材メーカーから納入された素材が生産の開始までの間に発生する資材在庫、加工中の工程間の仕掛かり在庫、加工完了後に製品が顧客へ出荷されるまでの間の製品在庫は、物の流れによって停滞します。これらには経費が発生していて、生産における無駄といえます。

 資材や製品は倉庫に保管されて、物の流れを柔軟にする役割を果たしますが、販売の立場からいえば、個々の顧客の多様なニーズに応えるために、製品を即時納入できる体制が望ましいといえます。この要望に迅速に対処する仕組みがクイックレスポンス(Quick Response)/アジャィル生産システム(Agile Production System)です。

 また、管理された部品在庫中心の生産システムの場合、部品在庫の役割は単に品物の保管を超えた重要な意味を持っています。また、仕掛かり在庫をできるだけ排除する方式が、JIT生産方式(Just in Time Production System)です。

 以上の生産方式を参考にしながら、自社に合った生産方式を採用して、在庫量や仕掛かり量を削減して、物の流れのスピードを上げることで物流改善を行います。

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 物流におけるデータ分析の重要性や、そこから得られる効果、データ分析におけるBIツールの活用などについて説明してきました。物流にデータ分析を導入することで、日々蓄積されるデータを見える化し、工程や作業の改善への活用にとどまらない、データに基づく経営改善の意思決定が重要な役割を果たします。

 物流データの分析はExcelなどでも可能ですが、できる限り人員を配置せず迅速性を高めるためにはBIツールの導入も効果的です。いずれにしても、物流データの分析目的を明確にした上で、自社に合った方法で行うことも重要です。

筆者紹介

MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)

日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。



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