見落としがちな物流分析で生産性を高めコストを低減する:現場改善を定量化する分析手法とは(8)(3/4 ページ)
物流コストは、輸送費だけでなく物流業務に費やした全てのコストのことを指します。調達部材と製品の社内物流、社外物流のコスト分析を行います。目的としては、物流コストの低減や流通のスピードアップ、部材および製品の在庫縮減、自社の商品や自社のサービスに対して顧客がどの程度満足しているかという顧客満足度を指すカスタマーサティスファクション(CS:Customer Satisfaction)の向上、納期短縮などが挙げられます。以下は、物流コストの内訳とコスト削減のポイントです。
物流コストは、以下の5つの要素から構成されます。
- (1)運送費:物を運ぶための費用
- (2)保管費:物を保管するための費用
- (3)荷役料:物を荷台に上げ下ろす費用
- (4)加工費:梱包作業などの費用
- (5)人件費:物流させるための人に関わる労務費用
物流コストを削減するためには、以下のポイントに留意することが必要です。物流コストの内訳を理解して適切な対策を取ることで、効率的な物流プロセスを実現することができます。
- (1)効率的な運送ルートの選定
運送距離や運送所要時間などが最適な運送ルートを選ぶことで運送費を削減することができます
- (2)在庫管理の最適化
適切な在庫レベルを維持し、最小限の保管費用の出費とします
- (3)荷役作業の効率化
荷物の積み下ろし作業を効率的に行うことで、荷役料を削減することができます
- (4)梱包プロセスの改善
梱包加工費を削減するために梱包プロセスを見直します
- (5)自動化と技術の活用
物流プロセスを自働化し、人件費を削減できる技術を導入する
生産活動は物の流れ(Material Flow)として捉えることができます。これは経済的にはロジスティックシステムであり、図1に示す3段階から構成されています。昨今の物流は、市場や消費の多様化のため、多品目、少量、多頻度の様相をなしており、多額の経費を費やしていますので、最適なロットサイズの検討と設定が必要です。
図1 生産のロジスティックシステム[クリックで拡大]
- (1)調達物流(Material Supply System)
資材(原料や材料)の供給源である供給業者から生産地点の生産現場までの物流を扱います
- (2)社内物流/生産物流(Material Handling System)
工場の生産現場における他部門からの資材の搬入や生産工程間の搬送、製品の外部への搬出など比較的限られた範囲の物流を扱います
- (3)販売物流(Physical Distribution System)
生産された製品を生産地点から市場や消費者などの消費地点への物流を扱います
- (4)回収物流/静脈物流(Waste Distribution System)
製品などの返品、工程間の運搬用容器の回収、廃棄物などの回収のために、顧客からメーカーまたは専門業者までの物流を扱います
- (1)輸送
主として、物流ネットワークの拠点間において、物を移動させる活動をいいます
- (2)運搬
生産職場や配送センター内の物の移動です。物が移動している状態であり、マテリアルハンドリング(MH)ともいいます
- (3)保管(貯蔵/停滞)
自動倉庫や回転棚、ラックなどによる物の保管をいいます。品物が加工などの変化を受けず、時間的経過だけを伴う状態で、倉庫などにおける保管や工程間の一時的停滞(待ち)などを指します
- (4)荷役
トラックからの物の積み卸し、倉庫内の搬送、保管場所での仕分け作業、入出庫作業などの物の取扱いをいいます
- (5)包装
内容物の保護、物流過程における物の取扱いに関する作業のためのユニット化など、製品の区分表示のための包装をいいます
- (6)在庫管理
在庫量や発注量、発注時期などの製品や商品の数量的な管理をいいます
- (7)流通加工
流通過程で行われる加工や組み立てなどのことをいいます。例えば、メーカーから自転車を部品で販売会社倉庫に送り、倉庫内で完成品に組み立て、小売店に送るという場合などです
- (1)自社の物流に関わる作業者や管理監督者の人件費
- (2)自社の保管や運搬、搬送に供する機器や装置類、機械設備類の減価償却費
- (3)自社の物流に関係する建物やスペースなど借用に伴う費用(借用料)
- (4)自社の物流に関係する場所の照明や動力源などに費やすエネルギー費
- (5)自社の物流に関係する機器類や機械設備の機械修繕費
- (6)自社の物流に関係する損害保険料
- (7)自社の包装設計費、材料費、加工費
- (8)外部に委託する輸送や搬送費、荷役費、伴う管理費
- (9)業務委託の人件費など
- (1)対象工程のフローチャートの作成
- (2)例えば、製品1個当たり、製品N個当たり、1パッケージ当たりなどの物流コスト原単位の設定
- (3)搬送ロットのサィズ、積載率、搬送距離、搬送時間、荷役回数、保管効率などの効率分析
- (4)手待ちや空運搬などのロスを含んだ実際のコスト分析
- (5)実際のコストと、ロスをゼロの状態にした場合の理想コストの比較
- (6)物流管理の情報処理のウエイトが高い場合の情報処理コストの分析
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