日本ではパートタイム労働者の増加もあり、労働者全体の平均労働時間が減少傾向にあると分かりました。
このような傾向は日本だけなのでしょうか? まずは平均労働時間について他国との比較をしてみましょう。
図4は主要先進国の平均労働時間の推移を表したものです。日本(青)は1990年のバブル崩壊までは年間2000時間を超え、非常に高い水準だったことが分かります。バブル崩壊後は一気に労働時間が短くなり、そのまま減少傾向が続いて、近年では米国やイタリア、カナダ、OECDの平均値を下回ります。
一方でドイツ、フランス、英国は日本よりもさらに平均労働時間が短いことも確認できますね。パートタイム労働者の多いスイスやオランダも日本を下回ります。
図5が主要先進国とオランダ、スイスのパートタイム雇用率です。オランダが圧倒的な水準にあるのが特徴的ですが、2015年あたりからやや低下傾向にあるようです。英国やイタリアも近年は低下傾向で、他の主要先進国も停滞しています。
一方で、日本(青)と韓国(茶)は上昇傾向が続いています。日本はスイスと同程度の雇用率になっています。
多くの先進国ではパートタイム労働者はあまり増えていなかったり、減ったりしています。その中で、日本の増加具合が目立つような推移となっていますね。日本の場合、高齢のパートタイム労働者が増加している影響も大きいと思いますが、現役世代でもパートタイム雇用率が上昇しています。
日本でも働き方が多様になりパートタイム労働者も増えていますが、近年は他国と逆行するような傾向にあるというのは、大変興味深い変化だと思います。
⇒次の記事を読む
⇒記事のご感想はこちらから
⇒本連載の目次はこちら
⇒前回連載の「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」はこちら
小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役
慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。
医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業などを展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.