――ところで貴社内に窯など陶器を作る設備はなかったのではと思いますが、この点はどうしているのでしょうか。
山添氏 これまでは友人の窯元に陶器製造を依頼していましたが、萬古焼は作り手の高齢化が深刻化しており、あと10年もすれば作り手がいなくなるといわれています。そのため、数年前に社内に窯も型も導入しました。それらの設備は、2023年に「作る・見る・食べる」をテーマとする「中村製作所(MOLATURA)オープンファクトリー」で公開しています。
実はこのオープンファクトリーも、私たちがやりたかったことの1つです。もともとは「製造工程を多くの人に見せられる、ガラス張りの工場を作りたい」という思いもあったのですが、本業のB2Bのモノづくりでは顧客との守秘義務のため非公開にせざるを得ない工程が多く含まれます。でも自社製品づくりの工程であれば、見せても問題ありません。
best potなどの自社製品で調理や盛り付けを行った料理を提供するカフェも併設しています。当社製品、ひいてはモノづくりの良さを感じてもらえる仕掛けを多く用意しており、来場者からは「単に見学するだけではなく、さまざまな体験ができる」と好評をいただいています。
――今後の展望についてお教えください。
山添氏 omouに関しては購入総額が130万円を突破(2024年2月末時点)して、学生さんと組んで生まれたアイデアがそれだけ世の中から認められたということを僕たち自身、非常にうれしく思っています。今後はMakuakeさんで購入されたお客さまからの要望も聞きながら、商品化を検討していきたいです。
加えて、当社としては今後インバウンドに力を入れていきたいと考えています。オープンファクトリーには、特に2025年の大阪・関西万博のタイミングで各国の方々にぜひ来てほしいです。
オープンファクトリーは自社のためだけではなく、四日市に人を呼ぶ観光地として機能してほしいと考えています。すでに四日市市や三重県の観光協会と連携して、茶畑や工場夜景などとの周遊プランの作成も始めています。町工場と同じで、まずは四日市の良さを知ってもらわないと始まりません。私たちもそのプロモーションの役割を担う存在の1つでありたいと思っています。
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長島清香(ながしま さやか)
編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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