埼玉医科大学は、直径0.1mmの光ファイバー1本からなる、レンズのいらない内視鏡を開発した。これを用いて、臨床で最も重要となる、光ファイバー先端から数〜数十mmの空間領域のイメージングに成功した。
埼玉医科大学は2024年2月15日、直径0.1mmの光ファイバー1本からなる、レンズのいらない内視鏡を開発したと発表した。これを用いて、臨床で最も重要となる、光ファイバー先端から数〜数十mmの空間領域のイメージングに成功した。大阪大学、宇都宮大学との共同研究による成果だ。
開発したレンズレス内視鏡は、2mmの分解能を持つ3次元内視鏡とゴーストイメージング技術を組み合わせ、単一の光ファイバーで光拡散場の中にある物体のイメージングを可能にした。ゴーストイメージング法とは、レンズとCMOSなどの2次元検出器を使って対象物を撮影するのではなく、あらかじめ構造が判明している光強度分布を対象物に照射し、散乱光の情報を利用して画像を再構築する技術だ。
今回の研究では、レーザー光が粗い表面に照射されたときに生じる粒状の光パターン(スペックルパターン)を光強度分布として利用した。事前にCMOSカメラで記録した3万枚のスペックルパターンを測定対象に照射し、散乱光を光ファイバーを介して記録する。
光ファイバーと測定対象の間に光散乱場として拡散板を入れた実験では、従来の脳外科内視鏡では画像化できなかった測定対象を復元できた。測定対象の拡散光との相関関係から画像化するため、開発したレンズレス内視鏡では血液による光を散乱させる媒質でも影響を受けにくいといえる。
細径の内視鏡は、1mm角程度の小型CMOSカメラを用いるなど、いずれもレンズを必要としていた。今回、髪の毛の太さほどの極細径の単一光ファイバーからなるレンズレス内視鏡の開発に成功したことで、患者の生体深部の病態の直接観察が期待される。
研究グループは今後、病理診断に適用可能な高い空間分解能を有した極細径内視鏡の開発に取り組む。さらに、イメージングだけでなく、カテーテル治療の超低侵襲な3次元ナビゲーションシステムの開発に発展させたいとしている。
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