東京大学は、国際共同研究コンソーシアムのMRIによる脳構造画像データを機械学習することにより、のちの精神病発症を判別する機械学習器を開発した。精神病ハイリスク群を70%超の精度で判別可能だ。
東京大学は2024年2月9日、国際共同研究コンソーシアムのMRIによる脳構造画像データをML(機械学習)することにより、のちの精神病発症を判別するML器を開発したと発表した。
今回の研究は、国際コンソーシアム「Enhancing Neuro Imaging Genetics through Meta-Analysis for Clinical High Risk(ENIGMA CHR)」で集積した2194人のデータを使用した。ENIGMA CHRは他施設共同研究のため、脳MRIの計測に機種間差が生じる。そこで、neuroComBat法により機種間差を補正して、2194人のデータをMLに用いた。
次に、思春期における脳構造の特徴変化を考慮するために、健常対照(HC)群データのみに一般化法モデルを適用し、男女別の健常な思春期脳発達曲線を作成した。精神病ハイリスク(CHR)群データにもこの思春期脳発達曲線を適用し、MRI計測後の追跡調査で精神病を確認したPS+群とHC群についてML法によりML器を構築した。
構築したML器の精度は、テストデータセットで85%、MLに使われていない確認データセットで70%超だった。追跡調査で精神病を発症しなかったPS-群と追跡不能だったUNK群に対するHC群との判別率はそれぞれ73%、80%であり、実臨床に即していた。また、このML器では、右上前頭回、右上側頭皮質、両側島皮質の表面積が分類に強く寄与した脳領域であることが明らかとなった。
構築したML器が実際の臨床現場で役立つかを意思決定曲線分析で検証したところ、閾値確率が約5〜40%であり、現在のハイリスク分類をしなければ2.5〜20倍危険であると考えるのであれば、ML器による分類をした方が良いということが示された。
CHRは臨床現場では判断が難しく、発症を予測できるバイオマーカーの開発が求められており、今回構築したML器の応用が期待される。
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