注目デバイスの活用で組み込み開発の幅を広げることが狙いの本連載。今回は、連載第21回で紹介したコンテスト「ロバチャン」の進化に向けて行った、加湿器のトランスデューサを用いた水中通信実験の構想と結果について紹介する。
今回は前回からの続きで、「Robust Protocol Open Challenge(ロバストプロトコル・オープンチャレンジ、略称ロバチャン)」というコンテストに適用したいと考えている、加湿器のトランスデューサを用いた水中通信実験を行います。本稿は、実験で証明する仮説に至った背景、実験の構想、実際に行った実験の内容報告から構成されています。
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図1は今回用いるトランスデューサの形状とサイズを示したものです。
超音波を発振するトランスデューサは平らな円盤の形状であり、そこから2本の電極のリード線が出ています。リード線の先にはコネクターが付いていますが、筆者はこれは使わずコネクターはカットし、少しリード線を延長してブロックターミナルに接続するようにして使っています。
では、このデバイスに書いてある説明文を見ていきましょう。
英文
16mm 1.5-3W DIY Moisturizing Transducer Mist Maker Atomizer Film Plate Accessories Ultrasonic Humidifier Rubber Gasket Micropore
日本語訳
直径が16mm、消費電力が1.5〜3Wの加湿器で、自作する人のための噴霧デバイスです。(この超音波振動子は)フィルム状の超音波加湿器用マイクロポアがゴムガスケットに装填(そうてん)されています。
英文を直訳しても意味が分かりにくかったので、筆者なりの意訳をしたのが日本語訳です。超音波振動子が何かに直接当たってしまうと振動数が変わったり妙な寄生振動を起こしたりします。そこで必要になってくるのが「マイクロポア(Micropore)」です。これは3Mの商標らしく、レーヨンなどの素材で作られた布のようなもので、主に医療現場で患部の肌を守るためによく使われる素材のようです。これが、振動子と外の何かに触れた場合にも緩衝材の役目を果たして超音波の発振に問題を起こさないようにしているのだと思われます。そして、マイクロポアはゴムのガスケットと超音波振動子の間に装填されているのではないかと想像されます。
“Mist Maker Atomizer”のAtomizerの意味が分からなかったので、外大卒の知人に聞いたらatomとmizerで「粒子化」するという意味になるんだそうです。ミストメーカーの液体を噴霧するデバイスに使われているわけですから腑に落ちますね。翻訳サイトに問い合わせたときは「アトマイザー」としか答えてくれなかったので、知人に聞いたわけですが、彼もChatGPTに聞いてくれたそうです。翻訳サイトがあてにならないときにも、ChatGPTがこんな形で役に立つんだと感心した次第です。
駆動電圧と入力電圧の下限が食い違うのは何だろうなとは思っていますがよく分かりませんね。その両者の共通する電圧で運用すれば問題ないのだろうと思っています。ですから5〜12Vがその電圧範囲なのでしょう。
そして大切なのは共振周波数が108KHzということですね。この周波数の電気信号を何らかの方法で生成してこのデバイスを駆動する必要があります。あと、耐用年数というか稼働させられる総時間が3000時間です。
1時間に噴霧化できる液体の量は、ミスト発生器として使う場合はもちろん重要なスペックでしょうが、水中で超音波信号の伝送に使う場合にはまあそれほど気にする値ではないでしょう。単位時間当たり多くの液体をミスト化できるということはそれなりのパワーがあること示しているので、その分音圧レベルも高くなるのでしょうね。
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