図3は、図2の模式図で示した実験を実際に行っている様子です。
図2では、送信側の信号を発生させる装置と受信側で液体の音圧の変化を電気信号として出力したものを観測する測定器とを別々に用意するイメージになっています。図3で実際に使用したオシロスコープは、電池でも駆動できるハンディタイプなのですが、オシロスコープと信号発生器とマルチメータの機能を有しています。これらの機能を活用して、送信側のトランスデューサには108KHzの周波数の正弦波を発生させこれを入力します。そして受信側のトランスデューサにはオシロスコープのプローブを接続し、出力された電気信号の波形を観測するようにしています。
百円ショップで買った水槽に4分の1ほど水を入れて、送信側のトランスデューサと受信側のトランスデューサを水の中に入れます。図3を見ると結構雑にトランスデューサをつるしているように見えますが、ここで大切なのは水槽の縁や底にトランスデューサが触れないようにすることです。そうでないと振動が水を伝わったものなのか、水槽を伝わったものなのか区別できなくなります。
あと、同じ測定器で送信も受信も行っていることを鑑みて、グランドが共通であるために双方が電気的に癒着した波形を見ている可能性もあるので、そこもしっかりチェックしておきましょう。そのために、どちらか一方のトランスデューサを水の中から引き揚げてみて波形が観測できなくなることを確認しています。
オシロスコープの画面を見てみますと正弦波と思しき波形が見えます。周波数は108KHzを示しており、振幅は数百mVp-pを示しています。ただし振幅の値については、トランスデューサ間の距離や角度によってまちまちです。
最初は妄想からはじまった仮説でしたが、これで一応、加湿器用トランスデューサを用いて水中における超音波信号の伝送が可能であるということを確認できました。
送信側と受信側のアイソレーションが不安だったので、送信側の信号生成と受信側の信号測定を別々の測定器で行ってみました。図4に示す通り、単一の測定器の場合とほぼ同じ結果になったので、水中における超音波伝送をあらためて実験で確かめることができました。
次は、この超音波に符号化した情報を乗せられるかの検証になります。また、今回の知見を踏まえて、動作を確認した仕組みをロバチャンのコンテストに適用できるかについても議論しなければならないのですが、前編と後編で書いてきたこの話はここでいったん区切りを付けます。次回以降の記事でその後の展開をご報告できればと思っています。
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