注目デバイスの活用で組み込み開発の幅を広げることが狙いの本連載。第16回は、近年広く販売されるようになった十字配線ユニバーサル基板の配線をカットするために、リレーを使って自作したスポット溶接装置を紹介する。
十字配線ユニバーサル基板なるものをご存じでしょうか。秋月電子通商などから販売されており2015年ころから取り扱っているようです。このユニバーサル基板は、スルーホールの縦と横(格子状)に既に配線されており、これらのパターンをカッターやルーターなどで切断することで、自由にユーザーの回路をこの基板上に作成できるというものです。ですからプリント基板を起こしたり、手はんだでユニバーサル基板上に配線したりする必要がないという代物です。
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筆者も秋月電子通商が取り扱い始めたころに使ってみた記憶があります。筆者の場合は、ハンディーのルーターを使って回路を作製しました。手で操作するルーターだと配線をきちんとカットできているかが目視だけでは分かりづらいので、テスターなどで最終確認が必要でした。また、一般的なユニバーサル基板は必要な配線のみを結線すればいいのに対して、十字配線ユニバーサル基板は作製している回路とそれ以外を切り離す必要があり、周りとの境界線の配線を全てカットする必要がありました。
そこで今回紹介したいのが、この十字配線ユニバーサル基板の配線を電気的に(ジュール熱で)カットする装置です。そもそもこの装置は十字配線のカット用ではなく、スポット溶接のために作製したものです。そのきっかけは、連載第11回の「パワーMOSFETでシャー芯に灯をともす」に対する読者からの「溶接を連想した」との感想でした。
それで電気溶接についていろいろ調べてみると、国内外を問わずDIYかいわいではスポット溶接(Spot Welding)の装置を作るのが流行っているようで、さまざまなECサイトでスポット溶接のキットが販売されており、またYouTubeではそれらのキットを作製した紹介動画やさまざまなオリジナリティーあふれる作例の動画なども多数アップされていました。ベンダーが販売するキットの説明では、リチウムイオン電池の電極をスポット溶接する用途のことしか書いていないようでした。また、YouTubeのオリジナルスポット溶接の作製動画を見ていても、最後はリチウムイオン電池の電極を溶接しているんですね。
そういった用途にそれほど需要があるとは思えず、また筆者の仕事場にはリチウムイオン電池の電極にスポット溶接する際の母材となるテープ状のニッケル薄板材料もなく、果たして筆者が製作したこの装置はスポット溶接に使えるのか疑心暗鬼でした。試すことといえば、100円ショップで買ってきたスチールたわし(昔でいえばスチールウールのようなもの)を少しほどいてジュール熱で燃やしたりしていました。そんな折、ちょうど今朝(※本稿執筆時)のことですが、先述した十字配線ユニバーサル基板の配線のカットに使えないかと思い付いたのです。これなら筆者の仕事場にも何年も前に買った残骸があるはず、と探したところ、案の定使いかけの基板が何枚か見つかりました。試してみたところ、思いの外うまく配線をカットできたので紹介したいと思います。
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