図2は、ミスト生成用のデバイスにより、水中で超音波が伝送されることを確かめる実験の模式図です。海外の通販サイトを眺めていたときに共振周波数が100KHz前後というスペックを見て「本来はミストを作るために使うデバイスかもしれないが、防水もされているようだし、水中での信号伝送にもこのデバイスは使えるのではないか」と妄想しただけのことでした。別に先行事例があるわけではなく、ただの妄想から生じた思い付きなのでそれは実験で確かめて見るしかないと、ちょっと見当してみたのがこちらの模式図になります。
図内の左側にあるTransducer1が、入力された電気信号により超音波を発生させるトランスデューサの役割を果たします。もう片方の図内の右側にあるTransducer2との間は液体で満たされているものとします。Transducer1が発生した液体の振動はTransducer2へ伝わると仮定します。Transducer2は、液体の振動を受けて電気信号に変える役割を果たします。そして、Transducer2が発生させた電気信号をオシロスコープで観測するのです。
また、Transducer1からTransducer2に超音波が伝わる様子は円弧を幾つか描いてそれを表しています。ガメラと戦うギャオスが超音波を吐く様子をイメージしました(編注:ギャオスは、口からは何でも切断する300万サイクルの衝撃波超音波メスを発射するという設定)。それを確認するためにギャオスの画像を検索したのですが、超音波を吐く様子は意外とそんな感じでもなかったですね。
それより驚いたのは、ガメラは空飛ぶギャオスと戦うために後ろ足が引っ込んだ穴がジェットノズルになっていてそこから火を噴いて空を飛ぶんですね。子どものころはそれほど感心しなかったのですが、いまあらためて見るとその奇想天外さには感服しかありません。組み込み技術者としても発想を豊かにするために当時の特撮映画に見習うところが多いかもしれませんね。
さて、ここで大切なことは、送信側も受信側も同じトランスデューサを使っている点です。このデバイスの仕様書には超音波を発生させてミストを作ることができるとうたわれていますが、液体の振動を電気信号に変える機能をもっているとはどこにも書かれていません。
このように逆の用途に同じものが使えることは世の中に多々あります。例えば、飛行場の滑走路は離陸にも着陸にも使えますよね。電気モーターは電気で回転しますが、モーターの軸を回せば逆に起電します。また、発光ダイオードもしかりで、電気で光りますが、逆に光を当てるとこれまた起電します。このトランスデューサも同じで、送信にも受信にも使えるというわけです。
この手のデバイスではピエゾ素子が使われています。ピエゾ素子は圧電素子とも呼ばれており、同じ素子が圧電効果と逆圧電効果をもちます。圧電効果は物理的な刺激を与えると起電する現象であり、逆に電圧を加えると伸縮するのが逆圧電効果です。自然界には、このような逆の効果を併せ持つ現象が多いですね。
この話はこのくらいにしておいて、早速実験に移りたいと思います。
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