サンケン電気と東芝の工場が2月に稼働再開、村田製作所は5月までずれ込み工場ニュース

令和6年能登半島地震によって大きな影響を受けている製造業の工場について、稼働再開に向けた取り組みをまとめた。

» 2024年01月23日 06時30分 公開
[MONOist]

 2024年1月1日、石川県の能登半島において最大震度7を記録する「令和6年能登半島地震(以下、能登半島地震)」が発生した。北陸地方には製造業の工場が多数あり、生産活動に大きな影響を受けたが、地震発生から3週間以上が経過した現在は順次稼働を再開している。

 ただし、震源に近い能登半島北部を中心に稼働を再開できていない工場も残っている。本稿では、工場の建屋や設備に大きな被害を受けた製造業が2024年1月18日以降に発表した復旧状況をまとめた(2024年1月23日0時時点)。

サンケン電気

 サンケン電気は1月22日、パワー半導体などを手掛けるグループ会社石川サンケン(石川県志賀町)の堀松工場(石川県志賀町)、志賀工場(石川県志賀町)、能登工場(石川県能都町)の3工場の状況を発表した(第8報)。

 1月17日発表の第7報で供給再開を目指していた工場用水については、各自治体の協力を得て、上水道の一部復旧や給水車による補給などで対応できる見込みである。また、停電が継続していた志賀工場についても、電力会社の協力により電力供給が復旧した。

 堀松工場と能登工場は一部の工程で2月上旬の生産再開を目指す予定だったが、電力の復旧が遅れた志賀工場の生産再開は今しばらくの時間が必要な状況だ。そこで、同工場の生産品の一部を堀松工場で代替生産することを新たに決定した。これにより、石川サンケン製品の早期生産再開を目指すとしている。

東芝

 東芝は1月19日、ディスクリート半導体の生産拠点である加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)の状況を発表した(第5報)。

 同社工場の主力ラインについては、遅くても1月末までに排気配管の修復などを完了する見込み。被災前の生産能力に近いレベルへの復帰については、主力ラインでは引き続き2月上旬を目標に復旧作業を急いでいる。他ラインについても2月中旬を目標に、さらなる前倒しに努めるとしている。

村田製作所

 村田製作所は1月19日、震源近くにあり稼働を停止している穴水村田製作所(石川県穴水町)とワクラ村田製作所(石川県七尾市)のうち、穴水村田製作所の状況を発表した。

 穴水村田製作所は、工場内の調査の結果、生産再開には設備と建屋の補修を行う必要があることが分かった。そのための期間として4カ月以上を要するため、生産再開は5月中旬以降になる見通しである。穴水村田製作所はチップインダクターやコモンモードチョークコイルなどを生産しているが、生産再開後に準備が整い次第、順次出荷を開始するとしている。

 なお、ワクラ村田製作所については、生産再開に向けてインフラと設備の状態を確認している状況が続いている。

EIZO

 EIZOは1月22日、本社工場(石川県白山市)とグループ会社EIZOエムエスの羽咋工場(石川県羽咋市)、七尾工場(石川県七尾市)の状況を発表した(第3報)。

 本社工場は1月4日から通常稼働している。EIZOエムエスの七尾工場からの一部生産ライン移設も完了し、予定通り生産を開始している。

 EIZOエムエスの羽咋工場は、1月10日から時間を短縮して計画通り稼働を始めている。従業員の生活の復旧と安全確保を最優先としながら、1月29日からは通常の70%稼働、2月13日から100%稼働を目指す。同社の七尾工場は、工場建物の安全確保および生産にかかる設備の点検、試運転を完了し、1月22日から時間を短縮して通常の30%稼働で生産を再開した。100%稼働については3月4日を目指すとしている。一方で、断水などによる生活インフラへの影響が残っており、引き続き従業員の生活の復旧と安全確保を最優先して対応していくという。

信越化学工業

 信越化学工業は1月18日、直江津工場(新潟県上越市)の状況を発表した(第3報)。

 セルロース誘導体、シリコーン、合成石英などを手掛ける直江津工場は、安全の確認がとれた設備から順次操業を再開していることを1月4日に発表していた。ただし、シリコーンの一部の設備で復旧が遅れている。シリコーン製品(シラン製品)の一部製品について出荷調整を行っていたこともあり、顧客向けの製品供給が滞っている状況にあるという。

デンカ

 デンカは1月18日、青海工場(新潟県糸魚川市)と五泉事業所(新潟県五泉市)の状況を発表した(第2報)。

 カーバイド化学を軸に化学品を生産する青海工場は、安全確保のため、地震発生直後から一部を除き緊急停止をしていたが、設備の点検/補修作業を進め、1月4日から、安全を確認できた設備から順次操業を再開している。1月末にはおおむね通常操業へ復帰できる見込みである。

 五泉事業所で手掛けている抗原検査キットなどの検査試薬は、安全を確認した上で1月4日から順次通常通りの操業を行っており、供給への影響はないという。インフルエンザワクチンも来シーズンの生産に向けて準備中である。

日本ガイシ

 日本ガイシは1月19日、子会社の北陸エナジス(石川県志賀町)の状況を発表した。

 受配電機器を製造している北陸エナジスは、1月12日発表の第2報では、建屋や設備の状況確認に時間を要しており、復旧に向け準備を進めているとだけ発表されていた。今回の発表では、配電機器工場は1月22日週から順次、生産を再開し、2月下旬の全面稼働を目指していることが明らかになった。一方、配電がいし工場については、一部設備に損傷があり生産再開時期は現在も確認中だという。

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