情報学研究所と日本眼科学会は、眼底画像から個人の性別を判定するAIを開発し、無償公開を開始した。同AIは、性別によって発症の頻度に差がある疾患の病態研究に役立つ可能性がある。
情報学研究所(NII)は2023年12月7日、日本眼科学会と共同で、学会主導データベース「Japan Ocular Imaging Registry(JOIR)」で収集した眼底画像から個人の性別を判定するAI(人工知能)を開発し、無償公開を開始したと発表した。
今回開発したモデルに、学習データとして性別のラベルを付けた17〜94歳の眼底写真13万1031枚を使用し、その後、一般的な深層学習モデル16個を用いて、性別を正解として深層学習させた。
検証データの眼底画像から推定した性別が実際の性別と一致する精度は、最も高いモデルで92.0%だった。この結果は、これまでに他の人種で実施された性別推定モデルと同程度の精度だ。
16個のモデルの中で、最も精度の高かった「EfficientNet-B7」と高精度(91.2%)で軽量の「MobileNet」の2つが今回公開された。2つのモデルはJOIRのWebサイト(※)からダウンロードできる。
(※)関連リンク:http://www.joir.jp/data/
これまでにも眼底写真からAIを活用して個人の状態を推定する研究は実施されているが、開発されたAIは公開されていないため、他の研究に利用することができなかった。日本眼科学会とNIIは、性別判定AIに先立ち、眼底画像から年齢を推定するAIを共同開発し、2023年1月に研究者が広く利用できるように無償公開している。
今回開発したAIは、性別によって発症の頻度に差がある疾患の病態研究に役立つ可能性がある。
なお日本眼科学会は、医療補助AIの研究開発を支援、促進するため、2019年にJOIRを設立し、全国の眼科関連施設からデータを収集している。
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