テルモが2024年4月1日付で新たな社長 CEOに就任する鮫島光氏の就任会見を行った。鮫島氏は、2017年から約7年間トップの任にあった代表取締役社長 CEOの佐藤慎次郎氏からバトンを引き継ぐことになる。
テルモは2023年12月15日、2024年4月1日付で新たな社長 CEOに就任する鮫島光氏の就任会見を東京都内で行った。鮫島氏は現在、専務経営役員 メディカルケアソリューションズ カンパニープレジデントを務めており、2017年から約7年間トップの任にあった代表取締役社長 CEOの佐藤慎次郎氏からバトンを引き継ぐことになる。
現代表取締役社長 CEOの佐藤氏は2024年4月1日付で取締役顧問に就任する予定。代表取締役会長の高木俊明氏は同職を継続する。鮫島氏は、2024年2月7日開催予定の取締役会で取締役候補者として選任された後、同年6月26日開催予定の定時株主総会による取締役選任の承認を経てから代表取締役社長 CEOに就任する予定である。
鮫島氏は1964年5月生まれの59歳。1988年3月に慶應義塾大学 経済学部を卒業した後、同年4月に東亜燃料工業(現ENEOS)に入社。2001年2月に入行したシティバンク、エヌ・エイを経て、2002年1月にテルモに入社し経営企画室に入った。この2002年に、スコットランドで人工血管を手掛けるバスクテックの買収交渉を担当することで、テルモのグローバル事業拡大に向けた取り組みを大きく推進させた。その後、米国で脳血管内治療デバイスを扱うマイクロベンションの買収にも携わった後、2006年7月に心臓血管グループ(米国)バイスプレジデント、2007年6月には心臓血管グループ カテーテルカンパニー(グローバル)プレジデントに就任している。2014年4月に執行役員 心臓血管カンパニー TIS事業プレジデント、2016年4月に上席執行役員、2017年4月に心臓血管カンパニープレジデント、2018年4月に常務執行役員、2020年4月にホスピタルカンパニープレジデントと要職を務め、2022年4月から現職。
鮫島氏は就任に当たって「新型コロナウイルス感染症という未曽有のパンデミックを経て、企業を取り巻く環境は大きく変化しており新たな付加価値が求められている。これからの企業はマルチステークホルダー経営の要請の高まりを受け、持続可能な成長を実現する必要がある。その一方で、インフレなどマクロ経済の動向や地政学的リスクなど事業環境の不透明さも高まっている。2024年度は、現行の5カ年成長戦略『GS26』の折り返し地点に当たる。現社長の佐藤が築き上げたGS26の基本骨格を堅持しつつ、新たな時代へ柔軟に対応すべく変革や打ち手を着実に実行し、テルモがこれからも『医療を通じて社会に貢献する』という企業理念をグローバルに果たせるように努力していきたい」と語る。
GS26では「デバイスからソリューションへ」という戦略コンセプトを掲げており、その実現のためには、さまざまなニーズに対してテルモの商品やサービスを組み合わせることで課題解決に向けた提案力の向上を図っていく必要がある。「ユーザーの皆さまから信頼される、選ばれるブランドになることが、業績の拡大、そしてわれわれのアソシエイト(従業員)のやりがいにもつながると信じている。これと並行してカーボンニュートラルなどの広い社会ニーズへの対応や、DE&Iに代表される優れた組織文化の醸成などにも尽力していく」(鮫島氏)という。
佐藤氏がトップを担ってきた2017年からの7年間では、直前に買収した事業をテルモ内に統合して着実に収益を上げていくためのカンパニー制を導入した後、カンパニー間の横串を通してグループ総合力を発揮するための体制構築を進めてきた。佐藤氏は「さまざまな要因で競争が厳しくなっていく中で、テルモも今のステージにとどまっていると相対的に地位が落ちていくかもしれない。新社長の経営体制では、そういった競争に負けない新たな挑戦を評価できる体制づくりを期待している」と述べる。
鮫島氏は新社長として、GS26の枠組みを堅持しつつ、企業を取り巻く環境変化が加速する中で追加的な施策も進めていきたい考えだ。「刺したり、支えたり、詰めたり、広げたりといった物理的に作用する伝統的な医療機器は先進国で成熟化が進んでいる。これらの技術を組み合わせて医療経済性の向上に貢献する、病院の作業負担を減らすといった付加価値の提供が求められている。そのためのソリューションを提案できる力を付けていく必要がある」(鮫島氏)。
また、テルモで海外企業のM&Aを多数手掛けてきた鮫島氏にはグローバル事業のさらなる拡大も期待されている。同氏が入社した2002年時点ではテルモの売上高の7割が国内向けだったが、現在は海外向けが7割以上と逆転している。同氏は「まず医療機器の最大市場である米国での地位をさらに高めていくことが必要だ。加えて市場が急拡大している中国、インドでは、テルモが非米系であることや地理的な近さも含めて浸透しやすいのではないかと考えている」と説明する。
鮫島氏は、2021年に創業100周年を迎えたテルモについて「長い歴史の中で培った強み、伝統を生かしつつ、変えてはいけないもの、変えなくてはいけないものをしっかり見極めて、未来志向で経営のかじ取りしていく」と述べている。この中で、“変えてはいけないもの”としては、グローバルで高い評価を得てきたのは品質の高さ、確かな生産技術に裏打ちされた高品質な商品を挙げた。また、“変えなくてはいけないもの”については、「今変わりつつあるものを強化するということになる。カンパニー経営によって、カンパニーとコーポレート、リージョンの関わりが希薄になってきたが、佐藤はその改善に注力してきた。これからはテルモとしての総合力をいかに発揮するかが重要であり、カンパニーとコーポレート、リージョンという縦糸と横糸をさらに細かく紡ぐことによって、より大きなソリューションを提供して行けるようにする」(鮫島氏)という。
鮫島氏が座右の銘として挙げたのは「過去は変えられないが、未来は変えられる」。また、テルモが企業理念の「医療を通じて社会に貢献する」を愚直に実現しようとしていることを最大の魅力として挙げている。
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