産業技術総合研究所は、特別な物性や複雑な化学構造を持つ、機能性化学品を連続合成できるフロープロセスを開発した。フロー反応システムと多段連続抽出分離システムを組み合わせ、反応、抽出、分離工程の連続化を図った。
産業技術総合研究所(産総研)は2023年10月30日、特別な物性や複雑な化学構造を持つ、機能性化学品を連続合成できるフロープロセスを開発したと発表した。フロー反応システムと多段連続抽出分離システムを組み合わせ、反応、抽出、分離工程の連続化を図った。
今回の研究では、抽出分離工程に着目。反応溶液と溶媒を混合するミキサー、目的成分を抽出する抽出管、抽出後に抽出液と残液を分離するセパレーターから成る連続抽出分離システムを構築した。抽出管は、反応溶液(水相)と抽出溶媒(有機相)が管内を交互に流れるスラグ流を利用し、1段あたり1分以内で抽出分離を完了する。
これを多段化することで、抽出液の再利用を可能とした。従来のバッチ法に比べて溶媒消費量を3分の1に削減し、かつ短時間で抽出分離できるようになった。
同プロセスを活用し、合成香料のバニリンを連続生産したところ、高純度なバニリンを総収率71%、毎時数gの規模で生産できた。バニリンの合成には反応と抽出分離を2回繰り返す必要があるが、フロー反応システムと連続抽出分離システムを交互に配置し、出発原料を連続投入することで連続的に生産できる。
第1工程と第3工程では、フロー法で高効率に反応を進行させることができ、生産効率の指標であるSTY(Space Time Yield)がプロセス全体で従来手法の17倍に向上した。また、第2工程で99%以上の溶媒と未反応原料を循環利用し、第4工程ではバニリンを3分の1以下の溶媒量で抽出分離できた。生産効率が向上したことで、廃棄物量を従来比約50%に削減している。
同プロセスは、他の機能性化学品の生産にも適用できる。今後は、適用事例を増やし、生産スケールの向上やプロセスの自動制御などの技術確立を目指す。
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