産業技術総合研究所は、次世代通信基盤となる第6世代移動通信システムで利用されるTHz波に対し、高い吸収率と高速の熱応答性を兼ね備えたTHz波吸収体を開発した。
産業技術総合研究所(産総研)は2023年9月26日、高い吸収率と高速の熱応答性を兼ね備えたテラヘルツ(THz)波吸収体を開発したと発表した。
開発した吸収体は、次世代通信基盤となる第6世代移動通信システム(6G)で利用される0.1T〜0.3THzのTHz波に対し、99%以上の吸収率と従来品の2倍以上の温度上昇速度を両立する。
開発品は、樹脂の表面に1〜100nmの薄い金属膜を施した構造になっている。3Dプリンタを用いて、スリットや空孔のある3次元の中空ピラミッド構造を形成することで、THz波の反射率と熱容量を抑制。これに吸収層かつ熱伝導層となるニッケルリン無電解めっき膜を組み合わせて、THz波の吸収によって発生した熱エネルギーを金属薄膜層全体に高速で拡散する。
樹脂を用いた3次元構造の吸収体は、平面型に比べて6G帯の吸収率を高められる。その一方で、構造体の高さが数mmとなるため、温度上昇時間が長くなる。この課題を金属薄膜層を形成することで克服した。
また、3Dプリンタによる成形は、吸収体を大面積化でき、湾曲、円筒、球面などさまざまな形状を作成できることから、THz波を検出する方位を制御するなど、検出技術の効率化や高度化を図れる。
開発した吸収体は、THz波の絶対強度を測定する6G用パワーセンサーの高精度化、高速応答化につながる要素技術となる。今後、THz波を用いた次世代通信技術の普及に貢献することが期待される。
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