定置用のリチウムイオン電池は製品としてのサイズがとても大きいですが、エリーパワーはその対極ともいえる軽さと小ささが要求される二輪車向けのリチウムイオン電池も手掛けています。過酷な環境を走るモトクロス選手権向けのホンダの車両に挑戦した上で、現在はさまざまな車種に対応できる市販の製品として販売されています。世界耐久選手権でスズキの車両に、ダカールラリーのホンダワークスマシンに採用された実績もあります。
このリチウムイオン電池は電動バイクの駆動用バッテリーではなく、始動用です。始動用のバッテリーをリチウムイオン電池にすることで、久しぶりにバイクに乗るときのバッテリー上がりがなくなるのがメリットです。寒い日でもエンジンのかかりが良くなるという特徴もあるようです。
二輪車の始動用バッテリーは一瞬で大出力が要求されるため、時間をかけて充放電する定置用とは性質が大きく違います。小型化だけでなく、異なる性能が要求される領域にもエリーパワーは対応してきました。ただ、過去の取材でエリーパワーは二輪車の始動用以外のモビリティ向けバッテリーには消極的な印象でした(2018年にマツダや宇部興産と四輪車の補機用バッテリーを共同開発するという発表はありましたが)。
今回、スズキからの追加出資に当たって、プレスリリースではエリーパワー 代表取締役会長兼CEOの吉田博一氏が「スズキが手掛ける多様なモビリティ領域に参入できることを大変うれしく思う」とコメントしています。どのように考え方の変化があったのか、大変気になるところです。
定置用、リン酸鉄、燃えないリチウムイオン電池、モータースポーツで採用……というキーワードでもう1つ思い浮かぶ会社が、村田製作所です。
村田製作所のリチウムイオン電池セルは、電気自動車(EV)のF1である「フォーミュラE」で採用実績があります。バッテリーシステムのサプライヤーが村田製作所のセルを採用し、フォーミュラEの共通バッテリーとして提供していました(最新の状況については未確認です)。
村田製作所も四輪車の駆動用バッテリーには消極的な見解を示していましたが、これもやはり数年前の取材でのことですので、何か変化があると興味深いです。
リン酸鉄系のリチウムイオン電池は海外勢ばかり話題になりますが、日本にも技術があるのです。材料だけ簡単に取り換えて電池が完成するわけではないのは重々承知の上ですし、日本企業同士が組むことだけが正義だというつもりはありませんが、協力が生まれていくといいなあ、と考えてしまいます。
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