カーボンニュートラルへの挑戦

エリーパワーの“燃えない電池”がさらなる進化、不燃新型電池を2025年に量産へ組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

エリーパワーが、2018年11月に発表した不燃性イオン液体を用いた新型リチウムイオン電池の開発状況について説明。この「不燃新型電池」は、消防法の規制対象外となるため適用範囲は広がる他、エネルギー密度の向上も可能で、2025年の量産を目標としている。

» 2022年03月30日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]
エリーパワーの河上清源氏 エリーパワーの河上清源氏。手に持っているのは正極材にオリビン型リン酸鉄リチウムを採用する大型リチウムイオン電池セルである[クリックで拡大]

 エリーパワーは2022年3月23日、同社主力工場の川崎事業所(川崎市川崎区)で会見を開き、2018年11月に発表した不燃性イオン液体を用いた新型リチウムイオン電池の開発状況について説明した。この「不燃新型電池」は、消防法の規制対象外となるため適用範囲が広がる他、エネルギー密度の向上も可能で、2025年の量産を目標としている。

 同社が2007年に実用化したのが、正極材にオリビン型リン酸鉄リチウム(以下、リン酸鉄)を採用する大型リチウムイオン電池である。コバルトやマンガン、ニッケルなどを正極材に採用する一般的なリチウムイオン電池と比べて、過充電やくぎ刺しをしても発煙、発火、破裂を起こさないという高い安全性を最大の特徴としている。同社 代表取締役副社長執行役員 兼 CTOの河上清源氏は「電力貯蔵用の大型リチウムイオン電池で第一に求められるのは安全性だ。この安全性を追求し、さまざまな過酷な条件にさらされても“燃えない電池”の実現に向けて事業を推進してきた」と語る。

銃砲弾貫通試験でも安全性が確認されている 銃砲弾貫通試験でも安全性が確認されている[クリックで拡大]

 この安全性を証明すべく2011年8月には、世界でも最も厳格とされるテュフラインランドの安全基準認証「TUV-S」を大型リチウムイオン電池として初めて取得している。現在も同認証を取得している大型リチウムイオン電池は他になく「世界唯一の安全なリチウムイオン電池だ」(河上氏)という。

 2010年には、同社の大型リチウムイオン電池が対象とする定置用蓄電システムの市場を深耕すべくシステム市場にも参入。筆頭株主の大和ハウス工業向けなどを中心に、現在までに7万4000台以上を出荷している。大型リチウムイオン電池の改良も重ねており、2007年の初代からセルの外形寸法は変更していないものの、2018年1月発表のVer.8までエネルギー密度や安全性、低温度環境下における充電性能のさらなる向上などに務めている。

エリーパワーの大型リチウムイオン電池セル エリーパワーの大型リチウムイオン電池セル。右端あるのが2007年に実用化した初代モデルで、そこから左端のVer.8まで改良を重ねてきた[クリックで拡大]
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