詳細設計では、CAEによる仮想的な設計検証が可能となり、その結果を設計にフィードバックしながら、設計完成度を高めていきます。最近では「1D CAE」といわれる手法も構想設計段階や詳細設計が始まる時点で実施されるようになり、これまで行われてきた設計計算とともに重要な作業となっています。
ここでの検証作業もスキルや経験に基づき行われることが多く、検証結果がデジタルで保存してあったとしても、必要とされる技術力や過去の経験に基づくナレッジなどは、頭の中にあることがほとんどです。
設計検証における主な課題/取り組むべき事項は以下の通りです。
課題/取り組むべき事項
・属人的な解析スキルを解消し、誰もが解析できるようにする
・過去検証実績のナレッジを共有する
設計審査を行うデザインレビュー(DR)では、ディスプレイに映し出された平面的な3Dモデルを見ながら、設計部門以外の参加者が中心となって意見が交わされます。対象となる装置の開発経験がない参加者はなかなか発言できません。これに対し、多くの経験を持つ参加者は、過去から現在に至るまでの不具合について、その改善有無を設計者に質問します。
考えてみれば、構想設計の段階や詳細設計の開始時に対策事項の確認ができていれば問題ないはずですが、着手時に情報共有がきちんとできていないことも少なくありません。また、「DFMEA」(設計段階におけるFMEA/故障モード影響解析)によって品質を高めようという考え方を理解していても、正しく運用できていないケースもあり得ます(そもそもDFMEAについて正しく理解できていないことも……)。
デザインレビューにおける主な課題/取り組むべき事項は以下の通りです。
課題/取り組むべき事項
・VR(仮想現実)やMR(複合現実)などの優れた可視化技術を運用する
・DRを設計者だけでなく全従業員の知恵を出す場に変える
・DFMEAなど、設計品質改善活動を行う
無事に設計審査が通れば、組立図から部品図に展開されます。3D CADの多くは、3Dパーツモデル(3D部品図)の設計を行いながら、3Dアセンブリ(3D組立図)を設計していきます。サイズ公差や幾何公差を3Dパーツモデル設計時に設定していることは多くはないものの、部品形状はこの時点でできています。
3D CADによっては、このパーツモデルに後からサイズ公差、幾何公差を設定することは「難しくない」ともいえますが、“3D⇒2Dという設計者の意図を伝えるための翻訳作業”がいまだに行われています。設計工数が不足している状況の中、こうした作業が設計部門の負荷を増やしているといえます。このような発言をすると「一義性のある2D図面を否定するのか!」と叱られそうですが、全くそうではなく、筆者は“正しい製図知識を理解し、一義性のある3D部品図として図面化すべき”だと考えています。
部品図設計における主な課題/取り組むべき事項は以下の通りです。
課題/取り組むべき事項
・3D部品図から2D部品図を設計する手間をなくし設計作業を合理化する
・3D部品図を加工図面として流通させる
・紙図面による出図をやめる
ここまで挙げてきた“課題/取り組むべき事項”は、これまでなかなか変えることのできなかった設計現場の仕事のやり方を大きく変えるためのヒントだといえます。そして、その具体的なアプローチの概要は以下のような取り組みが考えられます。
設計現場の仕事のやり方を変えるためのアプローチ(概要)
・情報共有(システム構築)
・社内システム連携(例:設計システム〜基幹システム)
・V字プロセス改善による設計検証の充実(CAE運用)
・3D可視化技術の改善による設計、製造品質向上(VR/MR活用)
・全社社員への教育活動(スキルアップ)
これらは先進的な企業や大手企業を中心に、設計部門や全社の活動としてプロジェクト化され、日々の業務変化やテクノロジーの進化を踏まえつつ、見直しを図りながら着実に進められています。
さて、ここで1つ疑問が生じてきます。こうした取り組みは先進企業や大手企業だけが行うべきものでしょうか? 中小企業は何もしないままでよいのでしょうか? 次回はさらに掘り下げて考えてみたいと思います。 (次回へ続く)
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