設計現場の仕事のやり方は変わらないままなのか?3D設計の未来(3)(1/2 ページ)

機械設計に携わるようになってから30年超、3D CADとの付き合いも20年以上になる筆者が、毎回さまざまな切り口で「3D設計の未来」に関する話題をコラム形式で発信する。第3回のテーマは「変わらない設計の仕事のやり方」についてだ。

» 2023年11月01日 09時00分 公開

 前回は「業務改善と設計開発環境の構築」について取り上げました。3D CADやCAEが多くの設計現場に普及し、その活用も広がっていますが、筆者が3D CADと付き合い始めてから約20年間、「仕事のやり方」そのものは変化したといえるでしょうか。今回は、3D CADやCAEの定着が“ある程度”進んでいる、一品一様の装置を手掛ける個別受注型装置メーカーを例に考えてみることにします。

 図1に、今回題材とする個別受注型装置メーカーにおけるワークフローと、出図までの設計者の仕事について整理してみました。

ある個別受注型装置メーカーのワークフローと出図までの設計者の仕事 図1 ある個別受注型装置メーカーのワークフローと出図までの設計者の仕事[クリックで拡大]

 顧客の要求仕様に基づき装置構想を行い、それを装置構想図、仕様書としてまとめ、原価見積もりを行います。そして、営業部門がこの原価見積もりを基に、見積書を作成します。以上のプロセスで準備した装置構想図、仕様書、見積書によって受注に向けた活動が始まります。

 その後、晴れて受注となれば、詳細設計が開始され、そこでの成果物は社内の設計審査(デザインレビュー:DR)や顧客との承認図説明のプロセスを経ることになり、承認が得られれば、部品図設計、出図となり、部品調達が開始されます。

 本稿では、構想設計、詳細設計、設計検証、デザインレビュー、部品図設計の各プロセスについて見ていくことにします。

構想設計

 装置構想では顧客の要求仕様に基づき、これを満足する装置の構成を考えます。ここでは、開発として新規設計になるものもあれば、流用設計になるものもありますが、いずれにせよ、ほとんどの場合が設計者の経験値に基づき進められます。また、装置構想や仕様書の作成は、設計者の経験やスキルに依存するところが大きいといえます。

 同様に、原価見積もりも経験とスキルが求められます。原価見積もり作業は、機械設計者を中心に、電気設計者、制御設計者も関わりながら進めます。図2のように、原価構成は多岐にわたることから、設計者一人で原価見積もりを行うことは容易ではありません。そのため、機械/電気/制御設計者以外にも、調達部門や製造部門が関わることも少なくありません。

個別受注生産型原価構成 図2 個別受注生産型原価構成[クリックで拡大]

 顧客との仕様打ち合わせにより、要求仕様がより明確になることや、それに伴い装置仕様が変更になることも珍しくありません。ここで設計者に求められるのは、要求仕様を満足するための技術力です。このとき、設計部門で検証することも少なくありません。3D設計を行う現在、構想段階におけるリスクをCAEなどのシミュレーションによって検証することも可能となりました。

 CAEの推進に関わる筆者としては、“構想段階でCAEによる検証を行うことが最も望ましい”と考えていますが、実態としては、詳細設計の終盤や製造後の不具合発生のタイミングでCAEが用いられるケースが多いと感じています。なお、受注活動における構想設計は顧客に対して無償で行われます。

 構想設計における主な課題/取り組むべき事項は以下の通りです。

課題/取り組むべき事項
・知識やナレッジの属人化(例:装置の分野別専門家、さまざまな設計を行ってきた設計者など)を解消する
・専門性と多能工的なスキルや経験を獲得する
・原価を構成する工数や部品原価情報を社内の類似案件の有効活用する

詳細設計

 受注後の詳細設計では、構想設計に基づき、完全な新規設計や流用設計が行われます。流用設計では、「ユニット」といわれる機能ブロックとして大きな機能単位、あるいは「サブアセンブリ」といわれるユニット配下の機能ブロックとして小さな機能単位で流用することが多くあります。

 筆者の感覚では、設計の60〜70%が流用設計だと考えます。ちなみに、流用設計の際の「どこに流用元があるのか?」という情報については、設計者の経験に基づき、個々の頭の中にあることがほとんどで、属人的であるといえます。詳細設計を行う上で、「標準化」や「モジュラーデザイン」といわれる手法の有効性が認められていますが、ここに着手している企業はまだ多くありません。

 詳細設計における主な課題/取り組むべき事項は以下の通りです。

課題/取り組むべき事項
・経験値に基づく属人的な設計から誰もができる設計へ変革する
・標準化やモジュラーデザインを進める

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