熟練者の経験知を持つAIが切削工具を適切に管理、モリマシナリーなど3者で開発工作機械(4/4 ページ)

» 2023年06月05日 10時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]
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AIがエンドミルの摩耗状況を予測

 「熟練者ノウハウを伝承するAIツールソムリエ実証機開発」は、モリマシナリーが担当し、「工具摩耗を高精度に可視化する撮像システムの構築」と「最適工具選定システムとAIツールソムリエ実証機の融合」を行った。

「熟練者同等の加工性能劣化状態診断に向けた工具摩耗メカニズムの解析」の開発イメージ[クリックで拡大] 出所:モリマシナリー

 「工具摩耗を高精度に可視化する撮像システムの構築」では、2020年度は既存のツールプリセッターにより撮像の問題点を洗い出した。2021年度は、洗い出した問題点を解消し、鮮明な画像を撮像できる高精度撮像システムのTOOL COLLAGEを開発した。2022年度は、TOOL COLLAGEの製品化に向けて、操作性と意匠性を高め、ターゲット価格を実現するためのコスト削減を図ったTOOL COLLAGEの新タイプを開発しただけでなく、欠陥検出モデルと摩耗予測モデルの商品化への問題も整理した。

「工具摩耗を高精度に可視化する撮像システムの構築」のイメージ[クリックで拡大] 出所:モリマシナリー

 小倉氏は「2022年度に開発したTOOL COLLAGEはエンドミルの刃先の撮像に特化したシステムで、既存のツールプリセッターが持つツーリング工具の測定機能を省くことにより大幅なコスト削減を達成した。一般的な加工現場はツーリング工具の測定機器を持っていることが多いため、そういった現場に提案できると考えている」と話す。2023年度はTOOL COLLAGEの駆動モーター(5軸)をサーボモーター化し、両備システムとともに他の種類やサイズの工具でも使えるように欠陥検出モデルと摩耗予測モデルの機能も拡張する見込みだ。

「TOOL COLLAGE」のイメージ[クリックで拡大] 出所:モリマシナリー

欠陥検出モデルと摩耗予測モデルはサブスク展開も視野に

 「最適工具選定システムとAIツールソムリエ実証機の融合」では、2020年度に統合実証機としてTOOL SOMMELIER MINIの設計/製作を行った。2021〜2022年度にかけて、各地の開発拠点で、岡山大インキュベータの研究室内にあるツールソムリエを安全に使えるようなデータ通信環境を構築するべく、TOOL SOMMELIER MINIに接続した研究室内のハードディスクをネットワーク接続した。

「最適工具選定システムとAIツールソムリエ実証機の融合」のイメージ[クリックで拡大] 出所:モリマシナリー

 2022年度は「メカトロテックジャパン2021」などさまざまな展示会にツールソムリエを出展しニーズを把握。さらに、欠陥検出モデルと摩耗予測モデルを搭載した高性能PCを接続したTOOL SOMMELIER MINI、ツールプリセッター、TOOL COLLAGEで使用した工具の位置と状態を確かめられるビュワーソフトウェアも開発した。2023年度は統合実証機の商品化に向けて検証と課題整理を行う予定だ。

TOOL SOMMELIER、TOOL SOMMELIER MINI、ツールプリセッター、TOOL COLLAGEで使用した工具の位置と状態を確かめられるビュワーソフトウェア[クリックで拡大] 出所:モリマシナリー

 今後は、2023年10月にポートメッセ名古屋で開催予定の「メカトロテックジャパン2023」で欠陥検出モデルと摩耗予測モデルのプロトタイプ版を出展し、展示会で顧客ニーズの集約を実施し、商品化に向けての足掛かりとする予定だ。欠陥検出モデルと摩耗予測モデルはサブスクリプションサービスでの販売も視野に入れて検討している。

サボイン事業期間中の成果まとめ[クリックで拡大] 出所:モリマシナリー

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