「多種多様な工具においても熟練者判断を実現する最適工具選定システムの開発」は、岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域の児玉研究室が担当し、「熟練者同等の加工性能劣化状態診断に向けた工具摩耗メカニズムの解析」と「持続可能なものづくりを実現するデータマイニング方式」の開発を行った。
「熟練者同等の加工性能劣化状態診断に向けた工具摩耗メカニズムの解析」では、切削中の工具と工作機械内のマシニングセンターの情報を取得し、この情報を基にデータベースを構築することを目指した。2020年度はデータベース構築のための設備(工作機械など)および環境を設けた。この設備と環境で、2021年度は2種類の直径が異なるエンドミルの切削実験を行い、実験で得られた切削中のエンドミルとマシニングセンターの情報を基にデータベースを構築した。
2022年度にはボールエンドミルを用いて切削実験を実施し、実験で得られた切削中のボールエンドミルとマシニングセンターの情報をデータベースに加えた。2023年度は主に学習データおよびテストデータを拡張する見込みだ。
「持続可能なものづくりを実現するデータマイニング方式」の開発では摩耗予測モデルの開発を目指した。2020年度は学習モデルを検討するための文献調査を行った。2021年度は、「熟練者同等の加工性能劣化状態診断に向けた工具摩耗メカニズムの解析」で構築したデータベースのマシニングセンターの情報を活用し、マシニングセンターに搭載されたサーボモーターの電流特徴量を基に、AIにより熟練技能者が判断するエンドミルの摩耗状況を予測する摩耗予測モデルを開発した。
2022年度は、このデータベースのボールエンドミルなどのデータを用いて、摩耗予測モデルを改良し、摩耗状況の予測精度を正答率70%に高めた。2023年度は構築したシステムの予測精度と外挿データを用いた摩耗予測精度を安定的に80%以上とすることを目指す。
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