モリマシナリーは熟練者の経験知からスマート工場化を実現する切削工具管理システム「AI TOOL SOMMELIER」を2024年度に発売する。同年度の売上目標として1億円を掲げている。
モリマシナリー、岡山大学、両備システムズは2023年6月2日、岡山県内の会場とオンラインで記者会見を開き、中小企業庁が主催する「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)」に採択された切削工具管理システム「AI TOOL SOMMELIER(AIツールソムリエ)」の開発状況について発表した。2023年度内に開発を完了した上で、2024年度に販売を開始し、同年度の売上高目標として1億円を掲げる。2027年度には売上高18億円の達成を目指す
AI TOOL SOMMELIERは、AI(人工知能)アプリケーション「欠陥検出モデル」と「摩耗予測モデル」を備えた高性能PCを搭載したマシニングセンター保管ツール管理装置「TOOL SOMMELIER MINI(ツールソムリエ ミニ)」、撮像システム「TOOL COLLAGE(ツールコラージュ)」で構成されるシステムだ。
TOOL SOMMELIER MINIに保管された工具をTOOL COLLAGEが撮像し、撮像で得られた画像データを、欠陥検出モデルと摩耗予測モデルで分析して、工具の摩耗状態や欠陥を検出し、ユーザーの切削作業で求められる最適な工具をピックアップして、必要な工具の迅速な段取替えを支援する。
国内の製造業では、少品種大量から多品種少量生産への転換が求められており、使用する切削工具の数や種類が増えたことで機外(マシニングセンター外)で管理する工具が増えている。例えば、モリマシナリーが取り扱う工具の数は、10年前に比べて約500本増加している。
さらに、200〜300本の工具を収納可能な大容量工具マガジン「WINE RACK(ワインラック)」の販売台数も増加傾向にあり、10年前から約2.5倍に増加しているという。
また、若年就業者の減少や人材育成/能力開発が進まないといった背景から、熟練者の減少が深刻な問題となっている。切削工具の管理では、必要な工具を迅速かつ確実に段取替えするには、高度な技能が必要で、未熟な作業者による誤った工具選択による品質不良や使用可能な工具の廃棄(生産コスト増加)が問題となっている。
こういった状況を踏まえ、工具を自動搬送する工具マガジン(切削工具収納庫)を製造するモリマシナリーは、切削工具の摩耗状態を可視化し、適切に管理するシステム「TOOL SOMMELIER」を2018年に開発し、2019年に発売した。しかし、TOOL SOMMELIERは、摩耗状態可視化のためには工具ごとに撮影箇所の設定が必要となる他、多くの工具の中から最適な工具を選択し、摩耗状態を見て使用可否を判断する熟練者が減少しているといった課題があった。
そこで、TOOL SOMMELIERをベースに、これまで熟練者に依存していた工具の欠け/摩耗/寿命をAIで判断することを目的とし、工場の生産性向上を支援するAI TOOL SOMMELIERの研究開発を行った。
なお、現在までのTOOL SOMMELIERの受注台数は3台で、昨今の半導体不足の影響で組み立てに必要なサーボモーターやPLC(プログラマブルロジックコントローラー)が不足し生産が遅れ、1台目の納入は2023年11月を予定しているという。
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