新車生産は新型コロナからようやく復活の兆し、2023年度は反動増へ自動車メーカー生産動向(3/3 ページ)

» 2023年05月23日 06時00分 公開
[MONOist]
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日産自動車

 ホンダと同様に低調だったのが日産だ。2022年度のグローバル生産台数は、前年度比3.7%減の326万5335台と5年連続で前年実績を下回った。8社の順位ではトヨタ、ホンダに次ぐ3位を保ったが、4位のスズキとの台数差は約5万台強と差が縮まった。要因は海外生産で、同9.4%減の266万8641台と5年連続の前年割れだ。

 地域別では、最大市場の中国がロックダウンやゼロコロナ政策、半導体不足の影響の他、新型車「エクストレイル」が新たに搭載した直列3気筒1.5リットルターボエンジンの不評で販売が伸び悩み、同17.9%減と大きく落ち込んだ。なお、この台数は小型商用車(LCV)を手掛ける東風汽車(DFAC)の株式売却に合わせ、LCVを除いて前年比を比較した日産独自の集計となる。日産の中国事業として前年実績にLCVを含んで比較すると同28.5%減となる。メキシコも同8.1%減とマイナスだった。一方、「パスファインダー」「フロンティア」といった新型車を投入した米国は同21.9%増と好調だった他、新型「キャシュカイ」を投入した英国も同43.5%増とプラスだった。

 海外が低迷した一方、国内生産は伸長し、前年度比33.8%増の59万6694台と6年ぶりにプラスへ転じた。前年の部品供給不足による大幅減の反動に加えて、国内向けおよび輸出向け「エクストレイル/ローグ」、国内向け「セレナ」など新型車が貢献した。ただ、半導体不足の影響は大きく、コロナ禍前の2019年度との比較では21.2%減と、日産の生産能力を考慮すると本格回復には程遠い状況だ。

 3月単月のグローバル生産は、前年同月比22.2%増の35万5024台と2カ月連続で前年実績を上回った。これは前年3月が部品供給不足で大幅に減産していた反動増が理由。特に国内生産は、同68.1%増の6万4982台と11カ月連続のプラスで8社の中では最も高い伸び率だったが、2021年3月との比較では5.6%減と台数水準としては高いとはいえない。車種ではエクストレイル/ローグがけん引し、輸出も同2倍と大きく伸長した。

 海外生産も前年の反動増が主因。前年同月比15.1%増の29万42台と2カ月連続のプラスだった。中国は同14.5%増で、中国で生産する5社で最大の増加幅となった。なお、前年実績にLCVを含んだ比較では同2.2%減となる。メキシコも好調で同2.2倍、英国も同44.8%増だった。米国は同1.0%減と伸び悩んだ。

スズキ

 インド市場の好調に支えられたのがスズキだ。2022年度のグローバル生産台数は、前年度比13.8%増の321万490台と2年連続のプラスだった。コロナ禍前の2019年度との比較でも8.2%増と回復基調が鮮明だ。貢献したのが同社生産の6割超を占めるインドで、半導体不足が続く中、新興国向け輸出など半導体使用の少ない車種の生産を増やすことで台数を確保し、同15.9%増と2年連続で増加し、年度のインド生産として過去最高を更新した。インド以外の海外生産も増加した結果、海外生産トータルでは同13.8%増の225万6339台と2年連続で増加した。

 国内生産も伸長し、前年度比13.7%増の95万4151台と4年ぶりにプラスへ転じた。前年が東南アジアからの部品供給難で大幅な生産調整を実施したことに加えて、半導体不足も前年に比べて緩和したことが奏功した。

 一方で、依然として半導体不足の影響を払拭(ふっしょく)できていないのが実情だ。3月単月のグローバル生産台数は、前年同月比0.9%減の27万6984台と2カ月連続のマイナスだった。3月の世界生産が前年割れとなったのはスズキのみ。インドが半導体不足で同5.7%減と2カ月連続で減少したのが主な要因。インド以外の海外も同9.3%減と低迷し、海外生産は同6.3%減の18万3016台と2カ月連続で前年実績を下回った。ただ、国内生産は同11.6%増の9万3968台と2カ月ぶりに増加した。

マツダ

 マツダの2022年度のグローバル生産台数は、前年度比10.9%増の113万4982台と5年ぶりに増加した。前年が自然災害や部品供給難などにより低迷した反動の他、代替え部品の確保により半導体不足の影響を和らげたことが奏功した。とはいえ、半導体不足が解消していないことや、中国での販売低迷などもあり、コロナ禍前の2019年度との比較では21.9%減にとどまった。

 世界生産の3分の2以上を占める国内生産は、同9.8%増の76万4424台と4年ぶりにプラスへ転じた。中国からの部品供給不足に左右され、ロックダウンやゼロコロナ政策の期間での減少が目立った。車種別では、主力モデルの「CX-5」は同7.7%増と伸長したが、「マツダ3」が同18.5%減と低迷した。

 海外生産は、前年度比13.3%増の37万558台と5年ぶりにプラスへ転じた。国別では、タイが前年に比べて稼働停止の日数が減少したことに加えて、日本市場向け「CX-3」の生産を開始したことで、同96.8%増と大きく伸長した。メキシコも稼働停止期間の短縮や代替え部品の確保、メキシコ国内での販売堅調などもあり、同32.1%増と増加した。さらに2022年1月に稼働した米国工場が本格稼働し、北米トータルでは同61.4%増と大幅な伸びを見せた。一方、厳しいのが中国で、販売低迷に加えて、上海のロックダウン、ゼロコロナ政策なども重なり、同52.10%減と大幅なマイナスとなった。

 マツダでは年明け以降、回復傾向が続いており、3月単月のグローバル生産台数は、前年同月比34.5%増の12万3816台と2カ月連続のプラス。このうち国内生産は同36.1%増の8万5466台と2カ月連続で前年実績を上回った。車種別ではCX-5が同13.3%増、マツダ3は同33.6%増、「CX-30」は同54.0%増と主力モデルがそろって台数を増やしている。

 海外生産も、前年同月比31.3%増の3万8350台と2カ月連続のプラス。中国は需要低迷による生産調整で、同53.2%減と厳しい状況が続いている。一方、タイは前年より稼働停止日が減少した他、日本向けCX-3の純増により同14.3%増。北米も同89.6%増と伸長し、低迷する中国の落ち込みをカバーした。メキシコが前年に実施した稼働停止の反動や部品供給の改善により同85.1%増と増加し、米国も新型SUV「CX-50」の生産が本格化したことで倍増となった。

三菱自動車

 伸び悩みを見せたのが三菱自で、2022年度のグローバル生産台数は、前年度比0.5%減の101万9367台と2年ぶりに前年実績を下回った。海外生産が、同7.0%減の56万2114台と2年ぶりに減少したのが響いた。半導体不足など部品供給難により、主力拠点のタイが同12.1%減と低迷。一方、インドネシアは「エクスパンダー」のビッグマイナーチェンジなどの効果で同5.1%増とプラスを確保した。

 中でも厳しいのが中国で、ロックダウンやゼロコロナ政策の影響に加えて、新型「アウトランダー」が深刻な販売不振に陥っており、前年度比54.4%減と中国で生産する5社で最大の落ち幅となった。これを受けて3月から5月まで現地工場の稼働を停止する他、2023年3月期決算で特別損失を計上するという異例の事態に発展している。

 一方、国内生産は、前年度比8.7%増の45万7253台と2年連続で増加した。半導体不足は続いているものの、北米向け「アウトランダー」の好調や、5月から生産を開始した軽自動車タイプの電気自動車「eKクロスEV」および日産「サクラ」が貢献。前年にエアバッグ不具合で生産を停止していた「eKスペース」および日産向けにOEM供給する「ルークス」の反動増もプラスにつながった。

 3月単月のグローバル生産は、前年同月比14.1%増の10万806台と6カ月ぶりにプラスへ転じた。このうち国内生産は同24.7%増の4万8729台と4カ月連続で増加した。海外生産も、同5.7%増の5万2077台と6カ月ぶりのプラス。主力拠点のタイは同3.0%減だったが、インドネシアがエクスパンダーの生産増加により同45.6%増とけん引し、生産停止で同79.6%減と急減した中国の落ち込みをカバーした。

スバル

 8社の中で最も伸長したのがスバルだ。2022年度のグローバル生産台数は、前年度比20.3%増の87万3858台と3年ぶりに前年実績を上回った。前年に比べて半導体不足が緩和したことが要因だが、2019年度との比較では15.2%減という実績にとどまっている。このうち国内生産は同26.3%増の57万5021台と3年ぶりのプラス。海外生産は同10.1%増の29万8837台と4年ぶりに増加した。

 3月単月のグローバル生産台数は、前年同月比39.4%増の9万799台と2カ月連続の前年超え。8社の3月の世界生産で最大の伸長率となった。これは半導体供給の改善に加えて、前年3月が宮城・福島沖地震によりサプライヤーからの部品供給が滞ったため。このうち国内生産は、同42.0%増の5万4374台と2カ月連続のプラス。海外生産も同35.7%増の3万6425台と2カ月連続で増加した。

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