京都大学iPS研究所は、ヒト気道オルガノイドを用いたオートファジー関連化合物のスクリーニングにより、シクロヘキシミドとタプシガルギンが新型コロナウイルスに対して強い抗ウイルス効果を示すことを発見した。
京都大学iPS研究所は2023年3月24日、ヒト気道オルガノイドを用いたオートファジー関連化合物のスクリーニングにより、シクロヘキシミドとタプシガルギンが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して強い抗ウイルス効果を示すことを発見したと発表した。シクロヘキサミドは6種類のSARS-CoV-2変異株に加え、他のヒトコロナウイルスに対しても効果があることを確認した。
→特設サイト「新型コロナウイルス 製造業が直面する未曾有の試練」
同研究では、80化合物から成るオートファジー関連化合物ライブラリーとヒト気道オルガノイドを用いて、SARS-CoV-2の感染を制御できる化合物の同定を試みた。その結果、14化合物が細胞培養上清中のウイルスゲノム量を25%以下に低下させた。そのうち6化合物は作用させた細胞の生存率が50%以上で、抗ウイルス効果が高く、細胞毒性が少ないことが分かった。
次に、6化合物のうち用量依存的に抗ウイルス効果を示す化合物を調べたところ、シクロヘキシミドとタプシガルギンを作用することで、細胞培養上清中のウイルスゲノム量が用量依存的に減少することが示された。
さらに、シクロヘキシミドとタプシガルギンをSARS-CoV-2に感染した気道オルガノイドに作用させると、細胞培養上清中のウイルスゲノム量だけでなく、SARS-CoV-2ヌクレオカプシド(N)遺伝子とヌクレオカプシドタンパク質発現量も減少した。
シクロヘキシミドはタプシガルギンよりも抗ウイルス効果が強く、さらなる有効性評価を実施した結果、気道オルガノイドにおいて6種類のSARS-CoV-2変異株の感染効率を低下させ、iPS細胞由来肺オルガノイドにおいて他のヒトコロナウイルス2種類の感染効率を低下させることを確認した。
シクロヘキシミドはタンパク質合成阻害剤として働くため、毒性を示す恐れがある。しかし、毒性を低減して、かつ抗ウイルス効果を保持するシクロヘキシミド誘導体を開発できれば、SARS-CoV-2治療薬として応用できる可能性がある。今回、気道オルガノイドと化合物ライブラリーを用いた創薬スクリーニングが有用な手段であることが示されたことで、今後、さまざまな化合物ライブラリーを用いた治療薬候補の探索に役立つことが期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.