キョーラクは軟質樹脂による3Dプリント成形品の量産技術の確立に「世界で初めて」(同社)成功。同技術の製品実装の第1弾として、乳房を手術した人向けのインナーパッドをワコールと共同開発した。
キョーラクは2023年4月18日、人肌並みに柔らかい軟質樹脂による3Dプリント成形品の量産技術の確立に「世界で初めて成功した」(同社)と発表した。
今回確立した製造手法「軟質樹脂によるメタマテリアル3Dプリント技術」は、これまで3Dプリントでの使用は不可能と考えられていたショアA硬度0(人肌並みの柔らかさ)の軟質樹脂による3Dプリント製造技術と、成形品の内部構造を緻密にデザインすることでこれまでにない材料特性を引き出せるメタマテリアル設計技術を組み合わせて実現した。
キョーラクは、軟質樹脂によるメタマテリアル3Dプリント技術の製品実装の第1弾として、ワコールと共同で乳がんなどで乳房を手術した人向けのインナーパッド「ぷるるんメッシュパッド」を開発した。インナーパッドの製造に、軟質樹脂によるメタマテリアル3Dプリント技術を活用することで、柔らかさと通気性を両立し、従来課題であった着用時の蒸れの軽減と、快適な着け心地を実現した。
なお、3Dプリント技術を量産最終製品に適用する場合の品質管理については、キョーラクがこれまで培ってきた自動車部品、食品包装分野での製品製造における品質管理体制の活用によって、ぷるるんメッシュパッドの量産立ち上げに成功したとする。
人肌並みに柔らかいショアA硬度0の軟質樹脂は、ヘルスケア領域で注目されているが、その柔らかさ故に、これまでは3Dプリントには不向きで、複雑な加工が難しいとされてきた。
キョーラクは、同社が誇る100年以上ものプラスチック成形の技術力を生かし、ショアA硬度0の軟質樹脂を世界で初めて3Dプリントで安定的に使用する技術を確立したとする。3Dプリンタでの造形により、造形対象に3Dメタマテリアル構造を付与するなど、軟質樹脂に対しても複雑な加工が可能となった。
また、製造に3Dプリンタを用いることで、製品ラインアップごとの金型製作や製造工程で発生する材料廃棄といったムダを限りなく削減できるため、コスト削減やリードタイムの短縮だけでなく、環境に配慮したサステナブルなモノづくりにもつなげられる。
引き続きキョーラクは、今回開発した軟質樹脂によるメタマテリアル3Dプリント技術を、医療(車いすなど)、介護(介護ベッドなど)、スポーツ(シューズのインソールなど)といった多くの分野へ応用/実装を図ることで、既存課題を解決する製品の実現を目指すという。
併せて、キョーラクは目的とする用途に合わせた最適な設計を行うことで、素材の持つ性能をより引き出すことができるメタマテリアル技術を、次世代モノづくりに欠かせない重要技術と捉え、今後も研究開発、メタマテリアル技術を生かした製品開発を行っていくとする。
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