エス.ラボと慶応義塾大学は「第8回 国際バイオマス展 春」に共同出展し、ペレット式3Dプリンタ、粉砕機、押出成形機、ネットコンベヤー、ペレタイザーで構成される「アップサイクルシステム」を披露した。
新エネルギー総合展「第19回 スマートエネルギーWeek 春」(会期:2023年3月15〜17日/場所:東京ビッグサイト)内の「第8回 国際バイオマス展 春」では、エス.ラボと慶応義塾大学が共同出展し、ペレット式3Dプリンタ、粉砕機、押出成形機、ネットコンベヤー、ペレタイザーで構成される「アップサイクルシステム」を披露した。
アップサイクルシステムとは、不要になった樹脂製の廃棄物などに価値を与えて再び新たな製品として生まれ変わらせるシステムのことで、循環型社会の実現に向けた研究開発や実証実験、小規模な運用などでの活用を見込む。
「例えば、樹脂製品を扱う企業では、製造過程で発生する端材などの樹脂をそのままリサイクルに回すことができず、有料で外部に引き取ってもらっているケースもある。そうした中、行き場がなく廃棄するしかなかった樹脂を、全く別の価値のある製品に生まれ変わらせる“アップサイクル”に取り組もうとする企業が増えている」(説明員)という。
今回披露したアップサイクルシステムは、慶應義塾大学が代表機関を務め、鎌倉市や複数の企業/大学が参画する科学技術振興機構(JST)「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」の採択プロジェクトにおいて、地域研究活動サテライト拠点として2022年6月に開設した「リサイクリエーション 慶應鎌倉ラボ」(以下、リサイクリエーションラボ)で稼働する高付加価値アップサイクルシステムをモデルに小型/省スペース化した。なお、リサイクリエーションラボに設置されているペレット式大型3Dプリンタ(混合リサイクル式大型3Dプリンタ)もエス.ラボとの共同開発によるものだ。
「『アップサイクルの研究開発や実証実験に取り組みたいが、リサイクリエーションラボのシステムでは規模が大き過ぎるので、社内の研究部門の中に設置できるようなサイズ感のものがほしい』といった声に応えるため、小型/省スペース化を実現した。初めてアップサイクルの研究開発に取り組むといった場合でも扱いやすいシステムに仕上がっている」(説明員)
アップサイクルシステムは、大きく5つの装置で構成されている。まず、廃棄/回収された樹脂製品などをフレーク状に細かく砕く粉砕機、粉砕した樹脂材料を熱で溶かして押し出しながらフィラメント状にする押出成形機、フィラメント状になった樹脂をコンベヤーで運びながら冷却するネットコンベヤー、冷やされたフィラメントをペレット形状にカットするペレタイザー、最後に再生されたペレットで造形を行うペレット式3Dプリンタだ。
ペレット式3Dプリンタは材料対応力が高く、軟質材料から硬質材料まで幅広く対応できる。また、廃棄された樹脂製品を同じ材料として再生して利用するだけでなく、他のリサイクル材料や改質材などを添加してペレット化したものを用いて造形するといったことも可能となる。
材料の配合や改質といった造形品質を左右するレシピ(情報)、その実現に必要となる材料情報のトレーサビリティーや情報連携などについては、慶応義塾大学/リサイクリエーションラボでの知見やノウハウを生かしながら、仕組みづくりやシステム化につなげていくことを狙う。
アップサイクルシステムを構成する、ペレット式3Dプリンタ「GEM550D」、押出成形機「EXC25」、ネットコンベヤー、ペレタイザー「PTZ2022」をエス.ラボが開発(粉砕機のみ別メーカー品)しており、そのうち「押出成形機とネットコンベヤーについては新規に開発した」(説明員)という。
リサイクリエーションラボのシステムでは、押出成形機から出てくるフィラメントを冷却する際に水を用いているため、乾燥させて水分を飛ばす工程が必要だったが、今回のアップサイクルシステムでは、押出成形機から出てくるフィラメントをコンベヤーで移動させながら複数のファンの風で冷却する機構を採用している。これにより、装置のコンパクト化と工程やメンテナンスの簡略化を実現した。
アップサイクルシステム一式の販売価格は、ペレット式3Dプリンタの機種によって変動するが、展示会で披露した構成であれば3500万円程度になる。既に受注を開始しており、現在3件の導入が決まっているとのことだ。
展示ブースではアップサイクルシステムの他、エス.ラボのペレット式3Dプリンタを用いたアップサイクル事例や、リサイクリエーションラボでの取り組み事例など、多数の造形サンプルや作品などを展示していた。
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