保冷輸送のニーズは高い。その中でツインカプセラが当面のターゲットとしているのが、バイオメディカル系の保冷ボックス市場だ。最近では、COVID-19のワクチンなどで温度管理の問題で大量廃棄につながった事例もある。こうした損失を回避する上でも、ワクチンや検体の保冷輸送技術の向上は大きな意味を持つ。ツインカプセラはバイオメディカル向け保冷コンテナの市場ポテンシャルを約800億円と見積もり、その中で小型保冷容器の市場約25億円の開拓を目指す。
具体的な活用領域は、大きく分けて2つ想定する。1つは個人が採取した検体を自宅やクリニックから医療機関、検査センターに輸送するケースだ。がんなどの疾病の早期スクリーニングのために、尿や血液を少量採取してリスク検査を行うサービスが国内でも出てきている。従来は、病院で採取しなければならない、自宅採取しても数時間以内に医療機関に送らなければならない、といった制約があったが、ツインカプセラの小型保冷コンテナを使い宅配便などで輸送できれば、こうした負担は軽減される。
もう1つが創薬プロセスにおける分散型臨床試験(DCT)だ。分散型臨床試験は被験者が来院せずに自宅などで治験を行う。海外ではウェアラブルカメラなどを活用してDCTを実施するケースが増えており、日本でも取り入れる動きが一部で見られるという。
DCTでは被験者の血液などの検体を医療機関に輸送する必要があるが、ここでも小型保冷コンテナが活躍するチャンスを見込む。数滴程度の血液ならば自宅で採取可能なキットを使用して、本格的な採血を要する場合でも最寄りのクリニックで行うことで、小型保冷コンテナで手軽に発送できるかもしれない。
宮崎氏は「DCTは試験ごとに被験者数が異なるため需要量が読みづらい側面があるが、早期スクリーニングサービスはスタートアップを含めて多くの企業が国内展開しており、検体検査の用途で月に何千、何万件とまとまった需要が見込める」と説明する。ツインカプセラは現在、上記2領域での実証実験の実現に向けた取り組みを進めている。
小型保冷コンテナは電源不使用のため、輸送時の省エネにも貢献し得る。保冷環境の最適化によってドライアイスの搭載量も削減効果が期待できる。小型コンテナでありながら保冷期間が長く、一度の運送で遠くまで運べるため、中継地点の保冷設備の利用が最小限で済むのも大きなメリットだ。
ツインカプセラには将来、アフリカ地域でのワクチン輸送などに貢献していくという目標があるようだ。「もともと、最初に会社を立ち上げた時には、こうした地域で役立てられるのではという思いがあった」(宮崎氏)。保冷期間が4日程度もあれば、都市部から離れた村でもアフリカ域外からワクチンを輸送できると見込む。
今後は多様な市場ニーズに応えるため、保冷コンテナの小型化/大型化、保冷期間の延伸や振動抑制機能の向上など、小型保冷コンテナの高機能化や高性能化に取り組む。特に小型軽量という強みはさらに追求する方針で、「ごく少量の物資を運ぶ場合、現在の保冷コンテナでもやや大きいという声がある。1泊2日や2泊3日の輸送にも対応できる、容積1l(リットル)程度のさらなる小型コンテナの開発を目指す」(宮崎氏)という。
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