パナソニックは現在、中国国内市場における、食品の冷凍と配送を行うコールドチェーン事業の成長を目指した取り組みを進めている。パナソニックは収穫した農産物を倉庫まで運搬するプロセスと、食品を店頭から顧客の元まで届けるプロセスに適切な冷凍技術や機器を導入することで、中国のフードロス問題が一定程度解決できるとする。
パナソニックは現在、中国国内市場における、食品の冷凍と配送を行うコールドチェーン事業の成長を目指した取り組みを進めている。中国は先進国と比較してフードロスの多さが課題として指摘される。パナソニックは収穫した農産物を倉庫まで運搬するプロセスと、食品を店頭から顧客の元まで届けるプロセスに適切な冷凍技術や機器を導入することで、こうした問題が一定程度解決できるとする。2021年1月13日にオンラインで会見を開き、これらの中国コールドチェーン事業について説明した。
中国の食品冷蔵市場は急激に成長している。2017年時点で約2306億元(3兆6937億円)だった市場規模は、2020年には約3512億元(5兆6255億円)にまで成長した。2023年には約5493億元(8兆7987億円)に到達し、16%のCAGR(年平均成長率)で市場規模が拡大していくという予測もある。
成長の背景にあるのがコールドチェーンの未整備さと、それに起因するフードロスの問題だ。食品冷蔵流通率は、先進国平均では95%になっているが、中国では22%となっており、大きく差が開いている。また、食品損傷率については、先進国は果物、野菜ともに5%程度にとどまるものの、中国の食品損傷率は果物で11%、野菜は20%となっている。農産物の多大なフードロスが生じている状況で、中国政府当局もこうした事態を問題視して、コールドチェーンの普及を推進しているという。
こうした市場環境を背景に、現在、パナソニックは、産地で果物や野菜を収穫してから倉庫に運搬するまでの上流過程(ファーストマイル)と、倉庫から食品を運搬して消費者に届けるまでの下流過程(ラストマイル)でのコールドチェーン事業強化に取り組んでいる。
ファーストマイルにおける農産物ロスを減らす上で重要になるのが「産地急速予冷」のプロセスである。
農産物の劣化や腐敗を防ぐためには、収穫後、規定の温度まで急速に下げる冷凍処理が重要になる。こうした急速予冷を実現する機器として、パナソニックは冷却ステーションや差圧式予冷ステーション、移動式急速凍結装置などを開発している。
実際に冷凍機器を活用したケースとして、中国貴州省におけるサクランボの産地予冷の事例などがある。同州で生産されるサクランボは2日しか日持ちせず、そのため貴州省外に出荷することは困難だった。しかし、松下冷機の急速予冷用機器を使用したことによって、産地から2000kmも離れた北京にまで運搬し、販売できたという。
中国における冷凍機器開発、展開を手掛ける松下冷機システム 市場部 部長の孫兵(そんへい)氏は、「産地予冷は生産者にとって初期投資が大きく、確実に投資回収が行えるかを見極めるのは難しい。その中でも貴州省での取り組みは、十分な成功例の1つとして挙げられるだろう。機器を導入しやすいリースプランを促進するとともに、関連サービスの拡充を進めたい」と語った。
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