パナソニックは2025年に向けて、冷蔵ショーケースや冷凍システムを扱うコールドチェーン(低温流通)事業の売上高を中国で倍増させる。これまでは店舗向けの冷蔵ショーケースが事業の主体だったが、産地での収穫直後の冷蔵保管、低温物流、冷蔵ロッカーで中国の事業規模を拡大する。
パナソニックは2025年に向けて、冷蔵ショーケースや冷凍システムを扱うコールドチェーン(低温流通)事業の売上高を中国で倍増させる。これまでは店舗向けの冷蔵ショーケースが事業の主体だったが、産地での収穫直後の冷蔵保管、低温物流、冷蔵ロッカーで中国の事業規模を拡大する。中国で独自に展開する取り組みもある。現地で開発、製造、販売が完結する経営体制を生かして、コールドチェーンの急速な発達に伴う需要を取り込む。
中国では、食品の流通に必要な低温倉庫やトラック向けの冷凍システムが先進国ほど普及していないため、輸送中に傷む食品が先進国の5倍以上多い。中国政府も食品ロスを課題と捉えており、市場ニーズの高まりだけでなく、政策の後押しも追い風になりそうだ。また、食品流通以外にも、ウインタースポーツを普及させて国際大会での活躍を狙う政府の意向を受けて、人工降雪機やスケートリンク向けの冷凍システムの需要も高まるという。
パナソニックの中国コールドチェーン事業の2019年の売上高は310億円。2030年に3倍以上の1000億円に増やす目標だ。まずは食品のEコマースを拡大する新業態の小売り向け事業の拡大、北京オリンピックに合わせたラストマイル配送への対応、1次産業向けの事業拡大と段階を踏み、コールドチェーン全体でのサービス提供につなげる。
「日本では冷蔵車、冷凍車がたくさん走っていて、どこの地域でも新鮮なおいしいものが食べられる。これは中国では当たり前のことではない。コンテナに氷を入れただけで運んでいるので、途中で傷む食品が多い。黒竜江省や雲南省のおいしい果物や野菜、肉を、大都市の北京や上海に運べていない」(パナソニック 中国・北東アジア社 副社長の横尾定顕氏)
これまでは店舗向け冷蔵ショーケースがパナソニックのコールドチェーン事業の主体だったが、店舗に生鮮食品が届く前のトラック輸送、物流拠点、生産者へとサプライチェーンの上流に向けた取り組みを強化する。中国の食品冷蔵流通市場は、安全志向の高まりやフードロス削減に対応するため、年率16%の成長が見込まれている。低温物流倉庫は年300件というペースで中国国内の各地に建設されており、今後さらに1次産業がさかんな地方で増える見通しだ。
パナソニックは低温物流倉庫建設の元請けとしても受注を増やしている。空調や冷却システム、冷蔵庫、冷凍庫、給排水、製氷、ガスの調整など、低温物流倉庫の内部に必要な総合エンジニアリング事業を提供する。−25~+25℃まで、倉庫内でエリアごとに幅広い温度に対応できる。「2019年は低温倉庫で60件受注した。このうち10%は自社で工事込みでの案件だ」(横尾氏)。日本のコールドチェーン事業にない、独自の取り組みだ。
納入先の1つには、中国鉄道の物流拠点である中鉄鉄龍大連物流園もある。中国鉄道とパナソニックの取引は2年前からスタート。中国鉄道は鉄道網に併設する物流拠点を整備しており、大連物流園はかなり大規模な拠点となる。
倉庫だけでなく、生鮮食品の低温輸送の市場規模も大きな伸びしろがある。物流業者は、中国では中小企業が圧倒的多数だ。中国全土をカバーできる物流網を持つ企業は、「外資企業を含めて聞いたことがない」(パナソニック)という状況で、物流事業者の上位100社を集めてもシェアは1割にとどまる。現状では冷蔵車や冷凍車を持たない会社が多い。そのため、青果を対象とした食品冷蔵流通率は、先進国が95%なのに対し、中国では22%にとどまる。また、青果の食品損傷率は先進国が5%だが、中国では25%まで増加する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.