半導体不足やロックダウンに悩まされた2022年の自動車生産自動車メーカー生産動向(1/3 ページ)

2022年の自動車生産も半導体不足に悩まされた一年となった。日系乗用車メーカー8社合計の2022年(1〜12月)の世界生産を見ると、5月まで前年実績割れが続いたが、中国のロックダウン解除や前年の東南アジアのロックダウンの反動増などにより夏ごろから急速に回復。しかし、半導体不足により11月から再び減少局面に転じた。

» 2023年02月24日 06時00分 公開
[MONOist]

 2022年の自動車生産も半導体不足に悩まされた一年となった。日系乗用車メーカー8社合計の2022年(1〜12月)の世界生産を見ると、5月まで前年実績割れが続いたが、中国のロックダウン解除や前年の東南アジアのロックダウンの反動増などにより夏ごろから急速に回復。しかし、半導体不足により11月から再び減少局面に転じた。

 その結果、8社合計の2022年の世界生産は、前年比1.8%増の2397万886台と3年連続で前年実績を上回った。ただ、コロナ禍前の2019年との比較では13.8%減と本格回復には程遠く、依然として半導体不足や部品供給網の混乱などが続いているのが実情だ。

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 2022年の世界生産は、ホンダ、日産自動車、三菱自動車の3社が前年実績を下回った。国内生産では、トヨタ自動車、ダイハツ工業、マツダの3社が前年割れとなった一方で、日産自動車とSUBARU(スバル)は2桁パーセント増となるなど、メーカーによって明暗が分かれた。8社合計では前年比0.1%減の738万6544台と微減となり、3年ぶりにマイナスへ転じた。国内生産の3分の1を占めるトヨタが落ち込んだことが響いた。

 一方、海外生産は、8社合計が前年比2.6%増の1658万4342台と3年連続で前年実績を上回った。ホンダ、日産、三菱自が前年割れとなったが、トヨタ、スズキ、ダイハツが2桁パーセント増で、特にダイハツは3割増と大きく伸長した。地域別ではロックダウンを実施した中国の低迷が目立ち、唯一トヨタだけがプラスを確保した。

2022年1月〜12月の国内乗用車メーカーの生産実績
国内 海外 (うち北米) (うち中国) 合計
トヨタ 2,656,009 6,370,704 1,830,840 1,839,772 9,026,713
▲ 7.7 11.7 2.0 11.5 5.2
ホンダ 643,973 3,226,188 1,198,753 1,424,120 3,870,161
4.6 ▲ 8.3 ▲ 7.8 ▲ 9.8 ▲ 6.4
日産 559,314 2,691,486 929,682 1,057,598 3,250,800
12.6 ▲ 12.9 ▲ 5.9 ▲ 17.9 ▲ 9.4
スズキ 919,891 2,252,301 - - 3,172,192
5.1 13.1 - - 10.7
ダイハツ 869,161 828,688 - - 1,697,849
▲ 1.1 29.6 - - 11.8
マツダ 734,833 357,063 179,150 94,161 1,091,896
▲ 0.1 5.2 40.7 ▲ 43.0 1.6
三菱 440,762 571,646 - 34,575 1,012,408
0.3 ▲ 6.2 - ▲ 43.4 ▲ 3.5
スバル 562,601 286,266 286,266 - 848,867
18.4 6.2 6.2 - 14.0
合計 7,386,544 16,584,342 4,424,691 4,450,226 23,970,886
▲ 0.1 2.6 ▲ 1.2 ▲ 7.0 1.8
※上段は台数、下段は前年比増減率。単位:台、%
※北米は、米国、カナダ、メキシコの合計

 夏以降の回復が11月に失速し、足元では半導体不足の影響が深刻化している。12月単月の8社合計の世界生産は、前年同月比14.8%減の182万8656台と2カ月連続のマイナスだった。これは半導体不足に加えて、中国の「ゼロコロナ政策」により大幅な減産を余儀なくされたことが主な理由だ。ダイハツとスバルはプラスだったが、トヨタ、ホンダ、日産、スズキの大手4社がそろって2桁パーセント減と厳しい実績となった。中国の減産などが響き、海外生産の8社合計は、同21.0%減の116万7644台と2カ月連続のマイナスだった。

 好調が続いていた国内生産も、前年同月比1.3%減の66万1012台と5カ月ぶりに前年割れとなった。日産、三菱自、スバルは大幅に伸長したが、トヨタ、ホンダ、マツダが2桁パーセント減となるなど、メーカーによって差がついた。

2022年12月の国内乗用車メーカーの生産実績
国内 海外 (うち北米) (うち中国) 合計
トヨタ 221,567 473,866 115,057 128,855 695,433
▲ 15.0 ▲ 12.3 ▲ 11.0 ▲ 35.6 ▲ 13.2
ホンダ 55,753 208,979 86,109 73,161 264,732
▲ 16.0 ▲ 32.3 ▲ 5.1 ▲ 55.2 ▲ 29.4
日産 58,887 161,822 73,335 33,638 220,709
98.5 ▲ 41.2 12.4 ▲ 75.2 ▲ 27.6
スズキ 83,069 150,228 - - 233,297
3.6 ▲ 16.3 - - ▲ 10.1
ダイハツ 78,028 83,031 - - 161,059
▲ 8.2 23.7 - - 5.9
マツダ 62,347 28,168 16,433 5,467 90,515
▲ 20.2 38.5 148.5 ▲ 48.2 ▲ 8.1
三菱 44,091 42,718 - 2,646 86,809
72.0 ▲ 32.3 - ▲ 66.4 ▲ 2.2
スバル 57,270 18,832 18,832 - 76,102
30.8 ▲ 21.9 ▲ 21.9 - 12.0
合計 661,012 1,167,644 309,766 243,767 1,828,656
▲ 1.3 ▲ 21.0 ▲ 2.0 ▲ 54.2 ▲ 14.8
※上段は台数、下段は前年比増減率。単位:台、%
※北米は、米国、カナダ、メキシコの合計

トヨタ自動車

 メーカー別に見ると、トヨタの2022年のグローバル生産台数は前年比5.2%増の902万6713台と2年連続で前年実績を上回った。海外生産が好調で、同11.7%増の637万704台と2年連続のプラスで、暦年でこれまでの最多記録だった2017年を上回り過去最高を更新した。生産台数の増加に伴い、海外販売も同1.7%増と過去最高を記録した。半導体不足の影響を受けたものの、前年が東南アジアでの新型コロナウイルスの感染拡大により世界的に部品供給が滞った反動が表れた他、北米やアジアでの能力増強が奏功した。

 地域別では、中国は5月ごろまで上海のロックダウンの影響があったが、その後の挽回生産や能力増強、生産最適化などにより、前年比11.5%増と10年連続で前年超えを達成。中国生産を行う日系乗用車メーカー5社では唯一のプラスだった。東南アジアは前年のロックダウンの反動増があった他、タイやインドネシアを中心に能力増強を実施。これにより主要拠点のタイが同28.3%増、インドネシアが同44.1%増、マレーシアが同49.9%増、ベトナムが同20.6%増、インドが同52.9%増と、軒並み高い伸びを見せた。その結果、アジアトータルでも同17.7%増と2年連続で増加した。

 主力の北米も部品供給不足の影響があったが、前年の反動増や能力増強、生産最適化などにより、前年比2.0%増と2年連続のプラスだった。欧州は「ヤリス」などが部品構成の関係で半導体不足の影響が少なかったこともあり同8.3%増、中南米も前年の反動増などにより同24.3%増と、それぞれ2年連続でプラスを確保した。

 一方、国内生産は前年比7.7%減の265万6009台と3年連続で前年実績を下回った。海外以上に半導体など部品供給不足の影響が大きく表れた。これは海外に比べてレクサスなど半導体の使用点数が多い高価格帯のモデルの生産比率が高いことが影響した。また、国内販売では20車種以上で納車時のスマートキーの本数を減らす半導体不足対策を10月から実施している。それでもモデルサイクルや長納期化などで受注を停止している車種も多く、新車ディーラーでは販売可能な車種が限られるなど、納期の長期化による事業への影響が深刻化している。

 夏ごろから回復していた生産だが、足元では再びブレーキがかかっている。12月単月のグローバル生産は前年同月比13.2%減の69万5433台と5カ月ぶりにマイナスへ転じた。このうち海外生産は、同12.3%減の47万3866台と8カ月ぶりに前年実績を下回った。中でも中国は、ゼロコロナ政策の影響を受けて同35.6%減と大きく台数を落とし、2カ月連続で減少した。

 一方、中国以外のアジアは能力増強や生産最適化に加えて半導体不足の影響が少なく、タイやインドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナム、インドで2桁パーセント増を記録。それでも中国の落ち込みをカバーできず、アジアトータルでは前年同月比18.4%減となった。北米も部品供給不足が響き、同11.0%減と5カ月ぶりに減少した。欧州は「ヤリス」の好調などにより同4.7%増とプラスを確保した。

 国内生産も厳しい。前年同月比15.0%減の22万1567台と2カ月連続の前年割れ。国内向けに優先的に部品供給を配分したことで11月より工場稼働は回復したものの、3工場4ラインで最大4日間稼働を停止した。これを受けて2022年度通期の世界生産計画も当初計画の970万台から920万台、さらに2月9日の決算公表時には910万台まで下方修正するなど、半導体不足が長引いている状況が伺える。

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