半導体不足やロックダウンに悩まされた2022年の自動車生産自動車メーカー生産動向(2/3 ページ)

» 2023年02月24日 06時00分 公開
[MONOist]

ホンダ

 ホンダの2022年のグローバル生産は、前年比6.4%減の387万161台と4年連続で前年実績を下回った。厳しかったのが世界生産の8割以上を占める海外生産で、同8.3%減の322万6188台と4年連続のマイナスだった。

 ホンダは中国の割合が高く、上海のロックダウンやゼロコロナ政策の影響が表面化し、特に4月は前年比8割減と大きく落ち込んだ。暦年では同9.8%減と2年連続で減少した。東南アジアは回復したものの、中国の低迷をカバーするまでには至らず、アジアトータルでも同4.4%減と2年ぶりにマイナスとなった。

 中国と並ぶ主力市場の北米は、高価格帯のモデルを中心に他地域より半導体の使用点数が多いことから、半導体不足の影響が顕著に表れ、前年比7.8%減と6年連続で前年実績を下回り、北米に工場を構える5社で最もマイナス幅が大きかった。

 海外が低迷した一方で、国内生産は前年比4.6%増の64万3973台と4年ぶりにプラスへ転じた。月ごとの稼働率のバラつきが大きかったが、前年に比べて半導体不足の影響が緩和し、通期ではプラスを確保した。国内最量販車種の「N-BOX」は減産影響を受けながらも、2022年の国内販売ランキングでトヨタ「ヤリス」を抑え2年ぶりの首位となるなど底堅い人気を示した。N-BOXなど軽自動車は比較的短期間で納車可能ながら、「シビック」「ステップワゴン」「ヴェゼル」「ZR-V」などはハイブリッド車(HEV)を中心に納期が1年程度と、依然として半導体不足の影響が続いている。

 実際に足元の生産も部品供給不足の影響が広がっている。12月単月の世界生産は、前年同月比29.4%減の26万4732台と2カ月連続のマイナスで、減少幅も8社で最大だった。中でも海外生産が厳しく、同32.3%減の20万8979台と2カ月連続で減少した。ゼロコロナ政策の中国が同55.2%減と低迷し、4カ月連続のマイナス。北米も同5.1%減と振るわず、2カ月連続で減少となった。国内生産も半導体不足で稼働調整を実施した結果、同16.0%減の5万5753台と2カ月ぶりに減少した。

日産自動車

 ホンダと同様に低迷したのが日産だ。2022年のグローバル生産台数は、前年比9.4%減の325万800台と5年連続で前年実績を下回った。8社の世界生産では最も減少幅が大きく、順位もトヨタ、ホンダに次ぐ3位を保ったが、4位のスズキとの台数差は約8万台弱と差が縮まった。

 低迷の要因は海外生産で、前年比12.9%減の269万1486台と5年連続の前年割れ。地域別では、最大市場の中国がロックダウンの影響の他、新型車「エクストレイル」が新たに搭載した直列3気筒1.5リットルVCターボエンジンの不評で販売が伸び悩み、同17.9%減と大きく落ち込んだ。なお、この台数は小型商用車(LCV)を手掛ける東風汽車(DFAC)の株式売却に合わせ、LCVを除いて前年比を比較した日産独自の集計となる。日産の中国事業として前年実績にLCVを含んで比較すると同20.4%減となる。

 中国以上に低迷したのがメキシコで、「ヴァーサ」「セントラ」「キックス」の低迷により前年比27.1%減と大幅減となった。一方、「パスファインダー」「フロンティア」といった新型車を投入した米国は同19.2%増と好調だった他、新型「キャシュカイ」を投入した英国も同16.3%増とプラスだった。スペインのバルセロナ工場が2021年12月に生産を終了したことも2022年暦年の海外生産の減少につながった。

 海外が低迷した一方、国内生産は伸長し、前年比12.6%増の55万9314台と5年ぶりにプラスへ転じた。前年の部品供給不足による大幅減の反動に加えて、国内向けおよび輸出向け「エクストレイル/ローグ」など新型車が貢献した。ただ、半導体不足の影響は大きく、コロナ禍前の2019年との比較では3割減と本格回復には程遠い状況だ。

 12月単月のグローバル生産は前年同月比27.6%減の22万709台と3カ月連続で前年実績を下回った。特に海外生産が同41.2%減の16万1822台と低迷し、3カ月連続のマイナス。ゼロコロナ政策の中国が同75.2%減と大きく落ち込み、中国で生産する5社で最大の減少幅となった。なお、前年実績にLCVを含んだ比較では同77.7%減となる。

 一方、中国以外は好調で、新型車効果の米国は前年同月比16.7%増、メキシコは同7.7%増、英国は同17.6%増だった。国内生産も好調で、同98.5%増の5万8887台と8カ月連続のプラス。エクストレイル/ローグがけん引しており、輸出も同2.6倍と大きく伸長した。

スズキ

 インド市場の好調に支えられたのがスズキだ。2022年のグローバル生産台数は、前年比10.7%増の317万2192台と2年連続のプラスだった。コロナ禍前の2019年との比較でも3.8%増と回復基調を示している。貢献したのが同社生産の6割超を占めるインドで、新興国向け輸出など半導体の使用が少ない車種の生産を増やすことで台数を確保した結果、同15.0%増と2年連続で増加し、暦年のインド生産として2018年の実績を上回り過去最高を更新した。ハンガリーなどインド以外の海外生産も増加した結果、海外生産トータルでは同13.1%増の225万2301台と2年連続で増加した。

 国内生産も、前年比5.1%増の91万9891台と4年ぶりにプラスへ転じた。前年が東南アジアからの部品供給難で大幅な生産調整を実施していた反動に加えて、中国でのロックダウン解除などにより部品供給が回復したことが奏功した。

 好調が続いたスズキも足元では半導体不足の影響が広がっている。12月単月のグローバル生産台数は、前年同月比10.1%減の23万3297台と6カ月ぶりにマイナスへ転じた。インドで半導体不足の影響が避けられず、同17.9%減と6カ月ぶりの減少。インド以外の海外も同7.0%減と低迷し、海外生産は同16.3%減の15万228台と6カ月ぶりに前年実績を下回った。ただ、国内生産は同3.6%増の8万3069台と8カ月連続で増加するなど、好調を維持している。

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