ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。第7回では、付加価値に関する3つの指標を分析して、OECD内での日本の経済的立ち位置の推移を見ていきます。
今回は付加価値に関連する3つの指標についての、日本の立ち位置の変化をご紹介します。
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付加価値は、事業を通じて新たに付け加えられたモノやサービスの価値を表します。つまり、私たちの仕事の価値そのものですね。国内で生産された付加価値の合計がGDPで、人口1人当たりの付加価値が1人当たりGDPです。1人当たりGDPは、大人も子供も高齢者も含めた、その国の平均的な生産性ともいえる指標です。
労働者が一定期間に生産した付加価値は労働生産性と呼ばれます。付加価値の労働者への分配が雇用者報酬で、私たちのお給料になります。今回は1人当たりGDP、労働生産性、平均給与の付加価値にまつわる3つの指標について、先進国での日本の立ち位置がどのように変化したのかを眺めてみましょう。
図1は横軸に労働生産性、縦軸に平均給与をとった相関図で、日本経済のピークとなった1997年の状況を示しています。主に先進国で構成されているOECD加盟国である33カ国についてプロットしています。バブルの大きさ(円の面積)が1人当たりGDPを意味します。為替レートでドル換算した数値での比較です。
まず注目していただきたいのが、労働生産性と平均給与と1人当たりGDPには強い相関関係があるということです。青い線が原点(0,0)と、両指標の平均値を結ぶ直線です。この直線に沿って各国が並んでいて、原点に近いほどバブルの大きさが小さく、遠いほど大きくなっています。この3つの指標が強く関係していることがよく分かりますね。
このことから1997年当時、日本は労働生産性も平均給与も先進国の平均値を大きく上回っていたことが分かります。労働生産性は米国や英国、ドイツなどの主要国とそん色ありませんでしたが、平均給与がかなり高い水準に達していたようです。
逆に言えば平均給与(年間の数値)に対して、生産性(時間当たりの数値)が低いとも言えそうです。ちなみに、当時の為替レートは121円/ドル(年平均値)ですので、やや円安気味のタイミングでした。
国名 | 労働生産性[ドル/時間] | 平均給与[ドル] | 1人当たりGDP[ドル] |
---|---|---|---|
日本 | 35.6(12) | 3万8856(3) | 3万5651( 4) |
米国 | 35.8 (11) | 3万3564 (7) | 3万1424 (6) |
英国 | 37.1(9) | 3万1678(10) | 2万6781(9) |
ドイツ | 38.6(7) | 3万52(12) | 2万7137(9) |
フランス | 38.0 (8) | 2万7051(17) | 2万4233(15) |
平均 | 26.7 | 2万3481 | 2万743 |
次にリーマンショック前の2007年の状態について見てみましょう。
図2の縦軸、横軸の数値を見ていただければ分かると思いますが、労働生産性、平均給与共に各国の水準が全体的に上がっています。OECDの平均値では、労働生産性が48.8ドル/時間、平均給与が4万112ドルです。1997年からの10年間で、全体として2倍近くに成長していることになります。
一方で日本を見ると、1997年から労働生産性も平均給与もあまり変化がありません。そのため立ち位置が大きく低下しています。この時点で既に労働生産性も平均給与もOECDの平均値を下回っています。平均給与に対して労働生産性が低い傾向は依然残っているようです。なお、当時の為替レートは118円/ドル(年平均)として算出しています。
国名 | 労働生産性[ドル/時間] | 平均給与[ドル] | 1人当たりGDP[ドル] |
---|---|---|---|
日本 | 38.6(20) | 3万7474(19) | 3万5785(19) |
米国 | 56.0(15) | 4万9355(12) | 4万7976(11) |
英国 | 68.3(7) | 5万9158(6) | 5万441(9) |
ドイツ | 58.5(14) | 4万3157(17) | 4万2295(16) |
フランス | 64.1(11) | 4万3308(16) | 4万1570(17) |
平均 | 48.8 | 4万113 | 4万101 |
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