最後に、最新の2021年のデータに基づくグラフを見てみましょう。
各国の労働生産性、平均給与の水準はさらに高まっていますね。上位にはノルウェー、デンマーク、アイスランドなどの北欧諸国や、スイス、ルクセンブルクといった経済水準の高い国々が並びます。
米国も高い水準を維持していますが、一方で、ドイツやフランスなどの主要国は大分平均値に近くなっています。日本はそれよりさらに平均値から遠ざかり、今やOECD下位グループに属していると言ってもよい立ち位置ですね。イタリアやスペインと同じくらいの位置です。
なお、2021年の為替レートは110円/ドル(年平均値)で算出しています。先にご紹介した1997年や2007年よりも円高でドル換算値は高めに算出されますが、他国との相対的な立ち位置はさらに低下していることになります。
国名 | 労働生産性[ドル/時間] | 平均給与[ドル] | 1人当たりGDP[ドル] |
---|---|---|---|
日本 | 45.0(21) | 4万489(20) | 3万9369(20) |
米国 | 85.0(8) | 7万4738(4) | 7万181(5) |
英国 | 64.5(16) | 5万3894(15) | 4万6369(18) |
ドイツ | 70.7(14) | 5万1712(18) | 5万1204(16) |
フランス | 68.7(15) | 4万7445(19) | 4万3360(19) |
平均 | 61.4 | 4万7738 | 4万8908 |
今回はOECD各国の労働生産性、平均給与、1人当たりGDPの関係をご紹介しました。この3つの指標は強く関係しています。
日本は1990年代に先進国の中でも高い水準に達していました。しかしその当時から、OECD内では平均給与や1人当たりGDPの水準に対して労働生産性が低い傾向にあったようです。その後、各国が成長する中で、日本だけがほとんど成長しなかったため、相対的な立ち位置を低下させています。
昔は低い生産性でも長時間労働で高い経済水準を達成していたのかもしれません。しかし、平均労働時間も他国並みに短くなってきた昨今、労働生産性に見合った経済水準とならざるを得ません。
これまでのように、価値は高くなくても量をこなすという仕事をするのではなく、少数/少量でも仕事の価値を上げていく必要がありそうです。
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小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役
慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。
医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業等を展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。
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