ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。第2回では、国内産業の稼ぎ頭といわれる製造業の「実力値」を確かめます。
前回確認したように製造業は日本最大の産業ですが、一方で、GDPや労働者数は減少してしまっています。今回は、この減少傾向をもう少し詳しく分析してみましょう。私たち国内製造業に具体的にどのような変化が生じているのか、さまざまな指標を年代比較することで明らかにしたいと思います。
ここでは経済産業省の公表している「工業統計調査」を基に、データを確認していきます。同統計調査では、製造業の従業者規模ごとの事業所数や、従業者数に関するデータが収められています。
図1は、日本の製造業について、事業所規模別の事業所数を1998年と2020年の数値で比較したグラフです。なお、「事業所」と「従業者」の定義については、文末の補足説明をご参照ください。
まず目を引くのが、4〜29人規模の事業所数の変化です。1998年時点では約32万事業所でしたが、2020年には約13万6000事業所と6割以上も減少していますね。
30〜99人規模も1998年時点の約4万事業所から、2020年には約3.1万事業所と2割以上減少しています。それ以上の規模の事業所では数に大きな変化はありませんが、殊更増えているというわけでもなさそうです。
確かに私の身の回りでも、近所の小規模な町工場がいつの間にか無くなっていたり、高齢の社長さんの引退に伴って廃業する取引先が増えてきたりと、何かと思い当たることがあります。
それでは事業所の規模別に見ると、労働者数はどのように変化しているのでしょうか。図2を見てください。
やはりというべきか、4〜29人の小規模事業所の従業者が大幅に減っていますね。20年の間に約半分になっています。それ以上の規模を持つ事業所でもおおむね減少傾向にあるのが分かります。
意外なことに、1000人以上の事業所で働く従業者も減っているようです。どうやら、企業が買収などで集約され大規模化した結果として小規模事業所が減少したわけではなく、単に多くの小規模事業所が市場で淘汰されたと見るのが実態に近いようです。
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