ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。第3回では、都道府県別に製造業の統計データを見ていきます。
今回は、地域別に見た製造業の変化についてご紹介したいと思います。取り上げる統計データは、前回に続き経済産業省の「工業統計調査」です。地域や産業ごとの従業者数や付加価値額といった興味深い統計データが公開されています。
前回までに見たように、製造業は日本の産業の中でGDP(国内総生産)も労働者数も多い稼ぎ頭の産業です。が、現状でのその2つの指標はどちらも減少している状態にあります。
この傾向を地域別に見ていくと、どのような特徴が見えてくるでしょうか。
まず、図1をご覧ください。都道府県別に見た、1999年時点での製造業の従業者数を比較したものです。
当時は国内全体で約940万人の従業者がいましたが、内訳を見ると愛知県で約83万人、大阪府で約66万人、東京都で約58万人が働いていたことになります。この3都府県で、国内全体の従業者の22%のシェアを占めていたようですね。このころは東京都も、日本有数の工業地域の一角を担っていたことが分かります。
続いて、同じく1999年時点での製造業の付加価値額を都道府県別に比較した、図2を見てみましょう。
付加価値とは、売上高から外部購入費用を引いたもので、粗利に近い指標でしたね。GDPは国内総生産、つまり国内で生産された付加価値の総額という意味です。ここでは、地域を国になぞらえる形で、「地域別に見た製造業のGDP」を求めていくと考えていただければと思います。
図2を見ると、付加価値の総額は上位3地域が、順に愛知県(約10兆9000億円)、東京都(約7兆7000億円)、大阪府(約7兆4000億円)となっています。並びを見るに、地域ごとの従業者の多さと何らかの関係がありそうです。当時の日本の製造業全体での付加価値額は約108兆円でしたが、この3都府県で約26%のシェアを占めていたことになります。
やはり自動車や航空産業の多い愛知県は、当時から断トツで製造業の盛んな地域だということが分かります。東京都を含め、神奈川県、埼玉県、千葉県など南関東地域が軒並み上位に入っているということも特徴的です。
日本ではかつて愛知県や大阪府と共に、東京都の製造業も盛んだったことがうかがえます。それでは、1999年から20年後である、2019年の統計を見てみましょう。どのように変化したのでしょうか。
図3は2019年時点での地域別の製造業従業者数です。
図内には1999年からの変化量(茶色部分)も付け加えてあります。これを見てまず驚くのが、ほとんどの地域で製造業の従業者数が減っている点です。特に東京都は20年間で約33万人と、すさまじい減少を見せています。1999年時点から20年で従業者数が半分以下にまで減ったことになります。
かつては全国3位の従業者数を誇った東京都は、2020年時点では全国8位へと大きく後退しました。ちなみに、代わりに全国3位になったのは、1999年時点では5位だった静岡県です。ただ、その静岡県も20年間で約5万人ほど減少しています。
1999年時点では従業員数が全国上位にあった地域を見てみると、変化したのは東京都だけではないようです。大阪府も約21万人、神奈川県も約18万人と大きく減少しています。一方で、愛知県と三重県、滋賀県は増加しています。
なお、製造業全体の従業者数は1999年時点の約940万人から、2019年時点では約770万人へと170万人ほど減少しています。
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