NMRを利用した有機化合物の定量的な純度評価に関わる国際規格が、ISO 24583「定量核磁気共鳴分光法 -食品に利用される有機化合物の純度評価- 1H NMR内標準法のための一般的要求事項」として発行された。
産業技術総合研究所は2022年12月21日、核磁気共鳴(NMR)を利用した有機化合物の定量的な純度評価に関わる国際規格が、ISO 24583「定量核磁気共鳴分光法 -食品に利用される有機化合物の純度評価- 1H NMR内標準法のための一般的要求事項」として同月19日に発行されたと発表した。同研究所、日本電子、富士フイルム和光純薬、国立医薬品食品衛生研究所、バイオ計測技術コンソーシアムが共同で取り組んできた結果となる。
ISO 24583は、NMR法を用いた定量分析手法であるqNMR(定量NMR)法の測定手順などを定めており、食品や医薬品の評価、有害物質のモニタリングなど、有機化合物の定量分析結果の信頼性を高める国際規格となる。
同国際規格では、分析者が目標として設定した不確かさの条件に対する実現可能性と妥当性を確認する方法、測定や解析条件などを設定する方法が示されているため、試験者は目的に応じて測定や解析の条件設定が可能となる。各種有機化合物の定量的な純度評価へ応用できるよう規格化されており、分析値の信頼性向上により食品成分などの分析精度の向上が期待される。
NMRによる定量分析の実用化を目指し、2008年から国立医薬品食品衛生研究所、産業技術総合研究所、花王、和光純薬工業(現:富士フイルム和光純薬)、日本電子が共同研究を開始。NMR装置用の定量解析ツールの開発や、世界初になるというqNMR用基準物質の開発に成功した。これらの成果を基に、2018年には日本工業規格(現:日本産業規格、JIS)「JIS K 0138:2018 定量核磁気共鳴分光法通則(qNMR通則)」が発行された。
2019年には、JISを基にした国際規格制定を目指し、ISO(国際標準化機構)の食品専門委員会に国際規格案を提案。このたび発行が承認された。本国際規格は有機化合物における純度評価の信頼性向上に寄与し、高い信頼性が必要な標準物質の開発にも活用できる。
今後は、さまざまな分野の研究、開発および分析実務に対応するqNMR測定、解析システムの高度化や簡易化、試薬、器具などの分析環境の整備をしていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.