【ケース8】3Dデータのファイル名はどうすべきか?設計現場のデータ管理を考える(8)(2/2 ページ)

» 2023年01月11日 09時00分 公開
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RDBMSでメタデータを管理

 形状データそのものを作る3D CADとは異なり、PDMシステムでは、形状データ以外のデータの管理/運用を行います。これを理解するには、メタデータ(metadata/データに関する属性情報を記述するデータ)について知っておく必要があります。

メタデータとは……(簡単に言うと)属性情報を記録したデータ

  • サーバオプション
    • ユーザー情報
    • リビジョンスキーム
      リビジョンの構造(順番)を示すもの
  • ファイル情報
    • リビジョン履歴
    • 所有者

 フォルダ管理と異なるのは、表(テーブル)形式の複数のデータをお互いに関連付けて管理する「RDB(Relational DataBase/関係DB)」によって、上記のメタデータを管理している点です。RDBは「RDBMS(Relational DataBase System)」と呼ばれるソフトウェアで管理され、SQL言語によってDB制御(検索や登録、削除など)を行います。RDBMSとしては、オープンソースの「MySQL」や「PostgreSQL」、Microsoftの「Microsoft SQL Server」、Oracleの「Oracle Database」などが有名です。

 筆者が普段使用している「PLEMIA Concurrent Design Manager(現:COLMINA CADデータ管理)」にはOracle Databaseが用いられています。中小企業の場合、情報システム部門が存在しないことも多いため、PDMシステム担当者はDBに関する基礎的な理解が求められます。

 メタデータの管理、つまり3D図面情報に関わる属性情報が管理されることにより、3Dデータと改訂や参照関係といった属性情報がひも付けられて管理されます。

 筆者が立ち上げ/運用経験のある「SOLIDWORKS PDM」(RDBMSはSQL Server)では、導入時に最初に行う設定作業で、PDMシステムに格納するファイル、フォルダ、アイテム、テンプレートといったメタデータを持つデータカードの検討と作成を行いました。一方、PLEMIA CDMについては筆者自身が直接作業したわけではありませんが、属性管理規約や状態管理規約(状態、版数、履歴)を決めていく中で、SOLIDWORKS PDMのデータカード検討に似たような作業を行ったと推察します。

 このようにPDMシステムでは、3Dデータとメタデータが連携しながら管理されます。

3Dデータのファイル名は個別認識できるユニークなものに!

 設計者は3D CADを使用して設計作業を行った後、その3Dデータを保存しますが、その際、保存するファイル名は個別認識できるユニークなものにすべきです。また、その後の改訂管理において、PDMシステム側で改訂記号が付加されることからも、設計作業の段階、つまりPDMシステムに登録する以前の段階で設定するファイル名は重要になります。

 ファイル名を設定する上では、これまでの図面番号をそのまま運用することがほとんどです。以下は、筆者の経験に基づく、PDMシステム運用前のファイル名設定のイメージです。

  • 組立図
    製番−ユニット番号−改訂記号
    (例)A0001-A01-a
    機種名/ユニット名−分類番号−改訂記号
    (例)ABC1-A-a
  • 部品図
    製番−ユニット番号−部品番号−改訂記号
    (例)A001-A01-001-a
    機種名/ユニット名−分類番号−ユニット内番号(部品番号)−改訂記号
    (例)XYZ1-A-001-a

 ファイル名の付け方は企業によってさまざまですが、ファイル名の中に「どの製品」「どの場所」「どれ」といった要素を含めようとする傾向が強いと思います。また、規格のある購入部品、2D図面化しない部品の場合は、型式がファイル名に設定されることがほとんどです。

 PDMシステムでは、改訂記号による版数管理の設定を行えます。これにより、記号を追記しなくてもその履歴に沿った3D図面を見ることが可能となります。さらには、他の製番で使用されている同一部品を検索することもできます。こうした運用を行うためにも、PDMシステムの運用検討の際には、ファイル名と版数の関係を再度認識し、定義する必要があります。

ユニークなファイル名とはいえない例 図1 ユニークなファイル名とはいえない例[クリックで拡大]

 図1にあるように、「Part1」「Part4」「ROLLER_JIG」といったファイル名のままでは、同一のファイル名が存在しかねないため、“ユニークな名前”とはいえません。まずは、「ファイル名と版数が結び付く名称を設定する」ことが重要です。次回は3D図面と2D図面、どうやって版管理ができるのかを考えます。 (次回へ続く

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Profile

土橋美博(どばし・よしひろ)

1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置メーカーで設計・営業・3次元CAD推進を行う。現在、液晶パネル製造装置を主体に手掛けるプレマテック株式会社で3次元CADを中心としたデジタルプロセスエンジニアリングの構築を推進する。ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)/SOLIDWORKS User Group Network(SWUGN)のリーダーも務める。


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